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gently than anyone 11
あー、エロい。エロいエロい。
快楽の余韻に震える身体も、涙ぐんで重たそうなトロンとした目も、半開きの口許も、なんともエロい。
そう言えば、ハル先輩はエロい顔も、トロけている顔も、全然不細工じゃない。
人間、そういう時は大抵普段と比べて美醜でいうと醜に傾くと思うのだが、全然そんな事なんてなくて、その歪んだ顔ですら芸術的に綺麗だ。それなのに物凄く妖艶で婀娜っぽい。
卑怯だと思う。こんな人を知ったら、手放せる筈がない。普通の女なんて抱けない。綺麗な女でも無理だ。例え一夜だけと誘われたとしたって、きっと勃たない。絶対ハル先輩と比べてしまうし、ハル先輩に勝る美貌を持った人間に俺は会ったことがない。いや、例え客観的に見てハル先輩よりも美しいと言える人間に今後出会ったとしたって、俺の中ではハル先輩が一番だ。ハル先輩は顔も中身も俺の理想のど真ん中。どストライクなのだから。
だから、俺はこの人から離れられない。
構図的には俺がハル先輩を捕えている様だけど、俺がハル先輩に心を奪われ、囚われているのだと思う。
「春、好きだよ。俺、貴方から絶対離れない」
離れられない。離れたくない。
まだ呼吸の整っていないハル先輩が少し不思議そうにこっちに目を向けた。
その表情には、ついさっき疼きを解放したとは思えない艶がある。
それもその筈。俺たちはまだ繋がっていて、会う前に抜いてきたばかりの俺はまだハル先輩を責めているから。イッたばかりの敏感な身体だから、激しくは責めない。慰めるように、それでも確かな快感を伝えるように。
「…俺だって。紫音が…すき」
いつになく素直なハル先輩が可愛くて、繋がったまま上半身も覆い被さってキスをした。
もうそろそろ余韻も慣れてきただろうから、また腰も強めに使う。
キスをしながら下も繋がって、しかも覚え込ませる様に何度も自身を最奥に埋め込むのは気持ちよすぎる。その感覚がが脊髄を通って脳に、全身に響く。そして、目の前がスパークするみたいな強い快感に襲われた―――。
無理とか言いながらも律儀に反応するハル先輩の身体が可愛すぎて、体力の続く限り何度だって犯してしまうのは何時もの事。
そして、後処理が大変なのは分かっているけど『自分』を少しでもハル先輩に刻みたくて中に出してしまうのも。
俺とハル先輩は元々の体力だって違うし、感じやすいハル先輩は軽く俺の倍は絶頂してしまうので、最終的には意識失くす所まで責めてしまう。
ハル先輩を前にすると理性も自制もぶっ飛んでしまうから、困ったものだ。
くったりとしたまだ熱いハル先輩の身体から己を引き抜いて、額にキスを落とすと洗面所から湯で濡らしたタオルを持ってきた。
ハル先輩の身体に飛んだどちらの物か分からない白濁や唾液の痕なんかを丁寧に拭う。
相手は意識もないというのに、その情事の痕というのはなんとも言えずエロい。
また昂りそうになる自身を諌めて、時おり温め直したタオルで上半身も下半身も丁寧に拭いた。
今日もさんざん苛めてしまった後孔からは、俺が出した白濁が溢れていて、それも綺麗に拭った後に「ごめんね」と一言断って指を挿入する。
中に溜まった精液を掻き出す様に動かすと、ハル先輩の身体がピクリと動いて、腰がもぞもぞ蠢く。
無意識に身体が快感を追っているのだ。
妖艶で淫靡な身体だ。恋人としてはそのエロさは歓迎ものだが、ハル先輩がそうなった原因を考えると、ただ喜んでばかりもいられない。
快感を追うことしか救いがなかったせいだと思うからだ。いや、それを追うように強制されたせいかもしれない。
何にせよ、無理矢理こういう身体にさせられたのは言うまでもない。それを、もろ手をあげて喜んではいけないような変な罪悪感に囚われる。
ある意味で俺はあいつには絶対に敵わないないのだ。ハル先輩の初めても奪われたし、性感帯の開発だってされ尽くしてた。嫉妬深い俺にはその事実を無視する事はどうしてもできない。例えその全てがハル先輩の合意のない行為だったとしても。
こんなにもハル先輩の身体にも執着するのは、あいつに勝とうと躍起になっている愚かな対抗心からなのかもしれない。
あいつがしたよりも強烈な快感を与えたいし、あいつよりも沢山自分を刻み込みたい。
そして、あいつが奪い去り、与えなかった愛情と労りと優しさを、奪われ続けていた分も補えるくらいにいっぱい与えたい。
ついさっきまで散々好き勝手腰を振ってた俺が言うのもおかしいのかもしれないが、俺はハル先輩に優しくありたいのだ。誰よりも優しくありたい。ハル先輩の事が好きすぎて、時に嫉妬に狂ってしまう自分をまだまだ抑えられないけど、いつも心の中ではそう思っている。
だから、どんなに怠くても必ずハル先輩の身体だけは綺麗にするし、汚れたシーツだって替える。そして、無体を働いてしまった事を謝る様に労る様に、腕枕をして慈しんでその身体を抱いて眠るのだ。
「おやすみ、春」
もう一度、今度は頬にキス。
安らかなその寝顔は、天使のように美しく儚い。
華奢な身体を抱き寄せると、ハル先輩の口元が満足そうに綻んだ。
今俺が抱いている幸福感を、ハル先輩も感じてくれているといいな。重たい瞼を落として微睡みながらも、強くそう思った。
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