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第5話

行為の後、翔吾さんが僕を抱きかかえて元いた場所へ戻り、持って来ていたタオルで身体を拭いてくれた。 中のモノは家に帰ってから綺麗にすると言って、二人で桜の木の下に敷いていたシートに座る。 翔吾さんが、後ろから僕を抱きしめて、髪に唇を押し当てながらくぐもった声を出した。 「雪…、俺最低だよな。嫉妬して、こんな不衛生な所で無理矢理抱いて…。雪は俺のモノなんだって、すぐに確かめたかった。不安だったんだ…」 「ふふ…、もういいよ。だって、気持ちよかったし。たまになら、こういうのもいいかも…」 フッと息を吐いて、翔吾さんの腕に力がこもる。 「俺は雪が好きだ。愛してる。誰の目にも晒したくないし、ましてや触れられるなんて絶対にダメだ!」 「うん、僕も翔吾さん以外の人は嫌だよ。…ごめんね。あの配達の人、いつも気さくに話してくれるから、僕も油断した。それにまさか、男の僕に抱きつくとは思わないもん」 「だからそこ!雪は誰からも狙われてるって自覚して注意するんだ」 「そんなことないと思うけど…。でもわかった。気をつける。だから翔吾さん、もう怒ってない?」 「怒ってないさ…。雪も怒ってないか?」 「なんで?」 「強引に抱いたから」 「僕が翔吾さんにされて怒るわけないじゃん。翔吾さん、大好き。ずっと一緒だよ」 「ああ、雪、ずっと一緒だ」 満面の笑みで振り向いた僕の頬に優しく口づけて、翔吾さんも、この春の陽射しのような暖かな笑顔を見せてくれた。 僕は今ある幸せに、とても満ち足りた気持ちになる。 この後に訪れる大きな悲しみを知らずに…。 …終。

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