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第1話

夜に隠れて俺たちは深く深く沈んでいく…… そこは誰の声も届かない。 俺たちだけの楽園。 ──── ── 重苦しいドアが閉まる音と同時に塞がれた唇。 生温かいそれが押し付けられると鼓動が速くなる。 「瞬……ッ……待、てッ」 「充分待った、今日一日中ずっとおあずけくらってる身にもなれよ」 「外では……ッ……んッ……ダメだって言ってるだろッ」 「分かってるよ、だから俺、ちゃんと我慢したろ?でもさ、名波さんに自分の撮影風景見られてると最近ヤバいんだよ、勃ちそうになる」 塞いでいた唇が僅かに離れた時、そんなワケがわからないことを口走りながら慣れた手つきでネクタイ緩めるとワイシャツのボタンを一つ二つと外された。 「……んんッ」 鎖骨へと移動した唇が濡れた音を響かせながらそこに吸い付き、激しく愛撫されると自然と吐息が漏れ、身体は次第に熱くなっていく。 ちょっと気を許した途端にこんながっつかれて、ため息を吐く暇すら与えてもらえない。 「……ッ……はぁ……もっと声だして、エロい声もっと聞きたい」 「……あッ……やッ……」 吐息混じりに声を出せとせがむ瞬の声が遠くに聞こえた頃、ここがまだ玄関先だということを思い出す。 鍵は……多分、閉めた。 だけど靴はまだ履いたままだし、背中には冷たい玄関のドア。 それに…… 「お前ッ……今日も泊まる……ッ……のか……?」 「いいじゃん、別に……ッ……」 今夜も瞬は俺のうちに行くと言い出し結局はこうして許してしまった。 「つーか、もしこのまま帰ったら名波さんが辛いだけじゃない?もうここだってすごい勃ってる……し」 そうニヤリとして下半身へと手を伸ばすと、形を変えつつあるそれに触れてくる。 「……あ……ッ、ん……さわッ……るな……」 「なんで?俺のキスでこんな熱くして、厭らしい声出して、そんな反応されたらもっとしたくなるじゃん」 直に触るわけじゃなく服の上からゆっくりと上下になぞるように触られてるだけでも、そんな耳元で囁かれる甘い声に一気に身体の力が抜けた。 「ッ……、ちょっと大丈夫?腰抜けちゃった?」 「わかんな……ッ……い……」 俺の異変に少しだけ焦った顔をした瞬が顔ずらして覗き込む。 「ここで一回出す?それとも……」 ちょっと下を触られただけで腰抜かしそうになるとか恥ずかしすぎるし情けない。 だから顔を逸らして俯いていると、すくい上げるように下からチュッと軽くキスされ、そのまま抱きかかえられた。 「ちょっ!瞬……ッ」 「ダメだ、いちいち反応が可愛すぎて無理。一回ヤりだしたら永遠に玄関先で名波さんのこと抱きそうだからベッド運ぶ。だから手、俺の首に回して」 余裕がないのか矢継ぎ早にそう言うと、そのまま寝室に続く廊下を歩きだした。 「瞬っ、降ろせ!」 「降ろしたら名波さんまだ靴履いたままなんだから床が汚れるだろ?だから大人しくお姫様抱っこされてて」 「……ッ……お姫って……誰がっ」 「……別に間違いじゃないだろ……って、はい着いたよ」 悪態を吐く前に寝室に着くとベッドにゆっくりと降ろされ丁寧に俺の靴を脱がせる。 そして瞬が俺を見下ろしながらまたニヤリとした。 「なんだよ……」 「いや、名波さんのスーツ姿俺好きなんだよね。かっこいいよ、マジで」 「あっそ」 ストレートな物言いにあえてそっけなく返すと、今度は何故か嬉しそうな顔してくる。 「……航平、もっと俺に夢中になって」 そして、俺を押し倒し見下ろしながら不意打ちに名前を呼ばれると一気に耳が熱くなった。

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