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第2話
「生意気……ッ……なんだよ……10年早い」
「耳真っ赤にして言われても説得力ないからね。それにある意味10年待ったようなもんじゃん?」
器用にネクタイを解き、シャツのボタンを下まで全部外しながら瞬が得意気に聞いてくる。
「10年の間、どのタイミングで憧れから好意に変わったんだよ」
「そんなの分かんないけど、今思えば初めて会った時からなんじゃない?じゃなきゃ、こんなモデル業頑張ってないよ」
「ふーん……」
「つーか、一目惚れかも」
いつの間にか全てボタンが外されたシャツ。
その隙間から手を胸へと滑り込ませるとそうポツリと呟いた。
一目惚れって、当時は12歳だろ。
「……ッ……12歳のくせにませたガキだったな、まったく……」
「今は、もう22だよ」
「まだ、22だ。俺からしたら22だってまだまだガキなんだよ」
この状況に擽ったさを感じ、触れらている手を避けるように身を攀じると、それ以上の力で押し戻され両手をシーツに押し付けられた。
「……ほんとにガキだと思ってんの?」
そしてそのまま視線を合わせながら瞬が真顔で聞いてくる。
……全部見破られているのかもしれない。
本当は、そんなこと思ってないことも……
本当は、時々見せる大人びた仕草に鼓動が速くなることも……
それに、俺を抱く時“航平”と呼ばれる度……心が揺れることも。
「……航平?」
ほら、そんな顔でまた俺を呼ぶから……
「……お前、狡いな」
そうだよ、狡い男だ。
「ズルいのはそっちだろ……身体だけはどんどん順応になるくせに、心はまだ俺のモノじゃない」
「じゃあ、どうしたら満足するんだ」
「……もっと近付きたい」
「何に……」
「名波さんの心に……もっと近付きたい」
だから狡いって言うんだよ。
そんな真面目な顔してそんなこと言われたら……
「……とっ、くに────」
「……え?」
だけど、まだ本音は口にしない。
もっと俺に夢中になるまでは……それまではもう少しこのまま。
「何でもないよ……続きしないならどけって……」
「するに決まってだろっ!」
はぐらかしながらちょっと気のないフリをすると途端にムキになる。
そんな所はまだガキで……でも、それを可愛いと思ってしまう自分がいて、そんな瞬をもっと見たいと思ってしまう。
それもまた厄介だ。
「じゃあ、早く……」
だから悟られる前に「早く」と首に手を回すと、引き寄せ、身体と一緒に心を近付けた。
*
「……ん……あ……ッ」
「口……もっと開けて……ッ」
お互いの舌を絡めながら吐息を漏らし、その体温を確かめ合う。
口端から生あたたかい唾液が流れ落ちるとそれを追いかけるように瞬の熱い唇が移動する。
「あ、……ッ……ん」
そしてそのままそこにキスを重ねるように何度も吸い付き、
「ねぇ、ここに跡……付けていい?」
そう舌先で首筋を舐められ問われると、もう抗えなかった。
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