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第38話
それからほどなくして、クリスマスを迎え、秀介は響の家に泊まりに来ていた。
二人はついさっきまで店にいた。
響が武宮から色々教わっているのを邪魔せず、秀介は静かにスコッチを舐めていた。
午前3時──。
週末を明日に控えた秀介は、響をベッドに押し倒し、抱き始める。
秀介と響がセックスをするのは、これが5回目だ。
最初は心の準備が追い付かずに密かに慌てふためいたいた響も、回数をこなすごとに随分慣れてきた。
アナルに秀介の熱を受け入れるのに伴っていた痛みも、感じないようになってきた。
「んッ……あ……ん……」
リズミカルに宙送が始まると、抜き挿しをするタイミングで、響は啼く。
そんな響の左手に、冷たい何かがはめられた。
「な、に……?」
揺さぶられる中で左手を持ち上げれば、銀色に光るリングが見て取れて、響は秀介の肩を渾身の力で抑え、宙送をやめさせた。
「秀介、これ……?」
「俺と揃いのリングだ。気に入らないか?」
彼ははにかんだように、綺麗に笑う。
笑いながら、彼自身が左手にはめたリングを、響に見せてくれる。
どうしよう、嬉しい──。
こんなサプライズが用意されているとは思わず、響はたまらず涙ぐんだ。
「響、改めて言う。お前の初恋を、俺にくれないか?」
「いいの……?俺なんかで、ホントにいいの……?」
「お前だからいいんだ。そう思わされた」
これは夢なのだろうか。
初恋の人がそばにいて、その人と繋がっていて、同じリングを指にはめている。
「秀介……好き……初恋の人が、最後の恋の相手でも、いいよね?」
一筋の涙で頬を濡らしながら問えば、秀介は「もちろんだ」と言って笑う。
そして、響にキスを落としてきた。
少しだけ酒の匂いがするけれど、それは響にも言えることで、二人は舐めるようにスコッチを飲んでいる。
舌と舌が絡み合って、淫らな水音が部屋中に響き渡るようになった。
「ああ、そう言えば……」
キスの狭間で、秀介が思い出したように話を切り出してきた。
「何……?」
「引っ越しな、年内にできることになった。無理矢理だったがな」
年末の休暇を使って引っ越しがしたいという秀介は、その時期でも請け負ってくれる業者を探していた。
少し値段は高くなってしまうが、秀介のわがままを聞いてくれる業者を探し当てたのだという。
「そっか……始まるんだね、俺達の同棲」
夢にまで見た、秀介との生活。
そもそもの生活のリズムが違う二人は、これからもすれ違うことがあるのかもしれない。
でも、そうなった時はどうすればいいのか知っている。
こうしてベッドの上で抱き合っていれば、それで全てのわだかまりが解ける。
「俺の初恋、もらって……」
響がそう呟けば、秀介は濃厚なキスを唇に落としてきた。
(終わり)
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