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001 笑って。

銀杏の舞う中で、見つめあう2人。 駅に大々的に貼られた今期のドラマのポスターだ。 「いいなあ」 俺は最愛のひとと触れあうのが怖い。 他のひとに知られたら、終わってしまう関係だから。 友達だった時より、注意して距離をとる。 それはなんだか息苦しくて悲しいことだ。 「大丈夫か」 ポスターに釘付けになっていた視界に、少し眉を寄せた彼が入ってきた。心臓がドキリと跳ね上がる。 「うわ、ごめん、なに?」 「……行き先を変えたいんだが」 「俺はかまわないけど」 どこに行くのかな、と彼の背を見て歩く。 電車を乗り継いで到着したのは、有料の公園だった。 らしくない場所の選定だなあと思う。 カサカサと枯れ葉が音をたてる。静かだ。 近くの地図を見るとここは公園の外れの通用口らしい。銀杏並木を2人きりで独占状態だ。 彼が向かったのは、道から少し外れたところに設置してあるベンチだ。 すとんと腰掛けて彼は俺を見上げる。 座れということかな、と隣に座ろうとした俺を彼が引き寄せた。 バランスを崩して、ベンチの背に手をつく。 吐息のかかる距離に彼の顔があって、息をのむ。 ごめん、と言って退こうとして止められる。 「難しいものだな」 「え?」 「こうしたら、笑ってくれるかと思った」 するりと頬を撫でられる。 「え?」 「いいな、と言っていただろう?」 舞い散る銀杏。 キスが出来そうな距離で見上げられている。 あ、あれか。あのポスター! 「や、あれは、その」 まさか聞いていたとは。 頬がカッと熱くなる。 「最近、ずっと張り詰めた顔をしてばかりだったから、少しでも気が晴れればと思ったんだが」 うまくいかないな、と彼が笑う。 俺の為に、してくれたんだ。 喜ぶと思って。 「っ!ありがと」 俺は、うまく笑えただろうか。 彼が、望んだように。 なんだか幸せで胸がつまって、泣きそうになった。

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