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002 切り取られた愛
切り取られた世界の中では、多分一番愛してる。
* * *
俺は、その瞬間が嫌いだ。
「はい、カットー!おつかれさまー!」
かけられた声で魔法が解けた。
一世一代の恋が終わる。
『彼』の愛した『俺』も『俺』が愛した『彼』もいなくなる。
俺だけ、取り残される、みたいなそんな感じ。
「今回もよかったよー」
「ありがとうございます」
外側はバタバタと撤収を始める。
『彼』も俺の知らない彼になって、スタッフと話している。
「今度の映画は間違いなしだね!」
興奮に頬を染めたマネージャーにそう言われて「そう、ですね」とぎこちなく笑う。
もう一度『彼』だった男を見る。
『彼』とは違う。違うんだ。
俺はいつも、置いてけぼりだ。
彼から視線を引き剥がして、俺は歩きだした。
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