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003.5年越しの愛は(Take1)
「先生。先生の約束通り5年待ちました」
「……約束?」
「忘れたフリしてもダメですよ」
ふふふ、と元生徒に楽しそうに笑われる。
5年前、確かに約束した。
子どもの告白は受付してねぇ。20歳になっても気持ちが変わんなければまた来い、その時はちゃんと考えてやるって。
だけどなぁ、おい。
「それ、なんの真似だよ」
地毛証明書を出してまで茶色のままにしていた髪を黒くして、あの頃していなかった眼鏡をかけている。
「傾向と対策ですよ。好きでしょう、眼鏡」
「嫌いだよ」
「嘘つき」
「本当に嫌いだ」
深く溜め息をつく。
俺を捨てたあの野郎を思い出すだろうが。
「……それに、お前ノンケじゃあねえの」
「女性が愛せるかってことですか」
「あぁ」
「愛せますけど。でも、女性だから好きというよりも、女性より貴方がいいっていうのが愛なんじゃないんですか」
「そんなん怖えだろ」
「何がですか」
「元教え子の人生ぶっ壊すんだぞ」
昔の教師のせいで、男に転びましたって?
人生棒に振ったって言われる。
悪いのはいつだって、年上だ。
「そんなのでは壊れません」
「それはお前は、まだ子どもだから」
「未成年ではありません」
「そうじゃない!人生経験が浅くて、道を間違いやすいから大人がしっかり、」
「あぁ!そうですね!」
ガンっと壁を蹴られる。
穏やかの仮面をかなぐり捨てたコイツから昔の一面が垣間見えた。
「年長者は臆病だ!革新をおこすのはいつでも若者の役目、ですもんね」
「おい!」
「なぁ、先生。先生に壊されるならそれでも幸せなんだよ」
低い、低い声だった。
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