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第125話 教科書泥棒24

(熊谷先生語り) 言われた通り風呂に入って戻ると、葵はテレビを見ていた。既に夢の中だろうと思っていたら、まだ起きている。時計の針は1時を指していたが、朝は特に早起きする必要はない。 「寝ないのか?もう1時だぞ」 「先生が出てくるの待ってた。一緒に寝ようと思って」 嬉しそうに寄ってきたので、テレビを消して一緒に布団へ入る。 さっきまではキスだのセックスだのと考えていたが、どっと出た疲れに、眠たくてしょうがなくなった。真冬の布団は寒々しく足をくっつけて温め合う。 葵の足先はビックリするほど冷たい。足の裏でじゃれるように互いを撫でていた。 「携帯はあのままでいいのか」 相変わらず床に転がしてある機械へ視線を送る。 「よくないけど、森田って字がディスプレイに出ただけで気分が悪くなるんだ。しょうがない……」 「葵……やはり俺から森田に言うべきだと思う」 向かい合った葵の表情が曇る。 「嫌だ。自分で何とかする。森田と先生は関係ないでしょ。どうしようもなくなったら、頼るから、それまでは俺が頑張る」 「分かったよ」 頑固な葵の性格から嫌がるのは分かっていた。 何かしてあげたくて、助けたい願望が思わず口に出てしまう。先ずは自分で何とかしたいのだろう、頑なに譲ろうとはしなかった。 こういう所は本当に男の子らしい。女とは違い頼もしくあるが、放っておけない危うさも持っていた。 段々と温かくなってきた布団に包まれて、心地よい睡魔に襲われる。 忘れていたが、青木先生にも意味深なことを言われたんだった。猪俣といい、青木先生といい、東高には頭のおかしな人だらけである。教職者は俺を含め、まともな奴がいない。 葵が俺の腕の中に入ってきたので、抱きまくらのように、ぎゅっと抱き締める。 柔らかい首筋に軽くキスをした。食いつきたくなる欲望が眠気に負けそうだ。 「先生、今日はしないの?」 予想もしない質問に、聞き間違いかと思って、そのまま寝ようとする。 「ねぇ、ねえ、せんせえー、しないの?」 再び問われたので、確信を持つため質問で返してみる。 「したいの?」 腕の中の可愛い恋人は顔を赤くして頷いた。 そんな顔をされれば眠気なんて一気に吹っ飛ぶ。グンと下半身も脳も臨戦態勢になろうとしていた。性欲に素直な男ってモンは情けない。 腕の中から顔を出した葵とキスをする。 スウェットの中に入れた手がすべすべの肌をなぞり、柔らかい双璧を揉みしだいた。 長いキスの後、葵は小さな声で 「せんせい、すき……」 と言って俺の胸に顔を埋める。 ああ、切なくてキュン死にしそうだ。 それから、理性がぶっ飛んであまりよく覚えていない。 先生ねちっこい、と葵に文句を言われたのはなんとなく記憶にある。

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