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第124話 教科書泥棒23

(熊谷先生語り) 暖かくなってきた部屋の中で、葵は俺の作った焼きそばをもそもそ食べていた。 俺はコンビニで買ってきたラーメンを食べる。 途中、じっとこちらを見てくるので何かと思ったら「交換して」と訴えてきた。希望通り交換して少し食べたら、もういいって突き返してくる。全く、我儘放題である。 今日の葵はあんまり喋らない。 普段はよく笑うのに、ずっと仏頂面だ。 反応して欲しくてデコピンしたら、強く睨まれただけだった。 森田絡みであることは明白で、ましてや一緒に風呂へ入ろうなんて雰囲気ではなかった。 葵が風呂に入っている間、黙々と部屋の片づけをする。 脱ぎっぱなしだった葵のジャケットから携帯が落ち、無機質な機械が転がった。携帯には電源が入っておらず、連絡しようにもできない状態だったことを物語っていた。 「それ……うるさいから電源入れてない」 いつの間にか葵が後ろにいて、濡れ髪を拭いていた。 「森田?」 「そう。電源入れるとすごいよ。返信してないから不在着信もあるだろうし。あいつは屈折してる。島田の言う通り変態だった」 「…………こっちおいで。髪の毛を拭かないと」 心底嫌そうに淡々と森田を貶す葵を呼ぶ。ソファへ腰掛けて、髪の毛を乾かした。うつむき加減のうなじがいつもより色っぽく見える。 「森田、あれからずっと休んでいるだろう」 「そうなんだよ。だから厄介なの。話そうにも話せないし、電話もメッセージも一方的ではぐらかされる。あれは直接捕まえるしかない」 「葵はこれから森田をどうしたい?どうするか決めたから、今夜ここに来たんだろう」 「…………うん」 葵を後ろから軽く抱きしめた。 ボディソープのいい香りがする。 「森田にハッキリ言ってもいい?状況によっては殴りたい。もしかしたら、先生にも迷惑がかかるかもしれない。もう限界なんだ」 「……葵が考えて決めたことには反対しない。俺とのことは、言い方次第でどうにでもなるから気にするな。俺だって森田を問い詰めたいと思ってる」 元はと言えば俺のせいでもあるので、なるようにしかならないだろうと腹は括ってある。 「先生はもうちょっと待って。俺が先に言うから、後にして欲しい。近々、学校へ来るように伝える」 「分かった。危なっかしいけど……怪我すんなよ」 「大丈夫。森田相手ならなんとかなる」 そして、くるりと葵が振り返るので、キスかと思い顔を近づければ、顎を手で押された。 「先生くさい。煙草とかお酒とか混ざった臭いがする。早くお風呂入ってきて。寄らないで」 「ふがっ……」 全く、酷いにも程がある。

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