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驚きを隠せない
睦月には訳が分からなかった
これはライバル宣言だろうか
三田村も睦月と同じ意味で
酒川のことが好きなのか
ただでさえ叶うはずのない恋だが
三田村が相手ならなおさら
こんなに気のきく面倒見の良いイケメン相手に
いざと言うときに黙りこむばかりの睦月が
敵いっこないだろう
これまでの恋愛も0で終わってきたが
こんな終りかたははじめてだと
そんなこと考え混んでいると
三田村は慌てて訂正をいれる
「だぁっ 違う違う!
酒川のことが好きなんじゃないから!
俺も睦月と同じでゲイだって話!」
睦月はふたつに驚いた
なぜ三田村には
ひとの考えていることが分かるのだろうか
そしてゲイとはどういうことなのか
「そ、そう、なのか」
驚きを隠せないまま
取り敢えず返事をした睦月に
三田村はどこかほっとしたような
間の抜けた微笑みを浮かべる
「あぁ まぁ飲み屋のトイレで
話すようなことじゃないよな」
「うん まぁ そうだな」
睦月はすぐにでも詳しく聞きたいと思ったが
場と日を改めることにした
睦月と三田村が席に戻る頃には
酒川の恋愛話は終わっており
睦月は聞きたかったような
聞かずに済んでホッとしたような
むずがゆい気持ちになった
それから後は意識して
酒川と目を合わせないようにし
なんとなく三田村の方を見ながら
ゲイ発言を思い返していた
そうして睦月はどうにか
飲み会から帰宅したのだった
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