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【7】-4
「わかっている。君は男の子で、僕も同じ男だ。それでも、気持ちを伝えるのに早すぎることはないと思った。部屋に行ったからと言って、最初から全部もらえるとも思っていない。君が欲しいと思っていることは本当だけれど、これでも欲望に耐えられるくらいには、僕も大人だ。紳士でありたいとも思っている」
それとも、と有栖川はわずかに瞳を揺らした。
「こういう関係は考えられない?」
ゲイを否定するかと聞かれた。
千春はかすかに首を振った。
人が誰かを好きになるのに、いいも悪いもない。好きになってしまえば、どうにもならない。そのことは、千春自身が、苦しいほど知っている。
「自由、だと思います。でも……」
「でも……? 頭では理解できても、嫌悪感を抱く……?」
今度ははっきりと首を振った。有栖川の目に安堵の色が浮かぶ。
「では、考えてみてほしい。僕が君を恋人にしたいと思っていることを、知っていてほしい」
真摯な言葉だった。
けれど、千春はうつむいた。
有栖川の気持ちには応えられない。恋愛の指向の問題ではなく、千春には誠司しかいないからだ。
生涯叶わない想いだとしても、それもまた、どうにもならないこと。
上手く伝えることものみ込むこともできない言葉が、喉に詰まる。何か言わなければと、気持ちが焦る。
三回食事をしても……と有栖川は言った。三回、一緒に食事をした。支払いは全て有栖川で、だからと言って誘いに応じなければならないわけではないのはわかっている。そんな考え方をすること自体、有栖川に失礼だということもわかっている。わかっているのに、染みついた矜持のようなものが、混乱した千春の手を動かしていた。
人に迷惑をかけてはいけない。借りは返さなくてはいけない。千春がしっかりしていなければ、母を困らせる。
「ごめんなさい……」
財布を取り出そうとする千春の手を、有栖川が制する。
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