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 開店を六月に早めたのは、千春の誕生日に間に合いそうだったから。  そう誠司は言った。  六月の第二週。土曜日。  千春の二十三歳の誕生日に、誠司の店はオープンする。 「千春……」  厨房から誠司が千春を呼んだ。  低くて、少し掠れた甘い声。千春の好きなその声で、何度も、何度も呼ばれた名前。  千春。  長い長い春。  店の名前は、最初から誠司が決めていた。  ――『ミレニオ・プリマヴェーラ』  MILLENNIO(ミレニオ)は「千年」。  PRIMAVERA(プリマヴェーラ)は「春」を表すイタリアの言葉。 「千春の名前だ」  誠司が言った。                         ―了―    最後までお読みいただきありがとうございました。

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