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【14】-4
『あいつは、経営とか、企業としての戦略とか、そういうのを考えるのは得意だ。だから、大きい流れは誠司に任せて、一つの店っていう小さい単位の、毎日の運営を千春がサポートすればいい。あいつの知らないことを、千春がきっと教えられる』
そんなふうに励ましてくれた。
「千春。ちょっと、これ味見してみろ」
厨房から誠司が顔を出した。
スタッフと一緒にマニュアル通りに調理したシチリア風のカポナータとピザの皿を手にしている。
オリーブオイルでナスを揚げる工程と煮込みは店で行い、煮込むための甘酢ソースは「セントラルキッチン」で加工されたものを使っている。ピザはほぼ焼くだけ。
「どうだ」
「美味しい! 誠司さんが作ったのと同じ味がする」
「よし。千春のお墨付きが出たぞ」
誠司が破顔する。
「ほんとに……、夢が叶っちゃうんだね」
千春がしみじみ口にすると、「まだまだ、これからだろ」と誠司が笑う。
「なにしろ、千春の望みは、世界中の人にこれを食べさせることだ。需要がなければ終わりだぞ」
「大丈夫だよ」
誠司の料理は、本当に美味しい。誰が食べても、きっと美味しい。
それに、誠司は勝算があるから始めたのだ。きっと、成功する。
それでも、確かに先のことはわからない。
「そっか。まだ、これから……」
「これからは千春の活躍も当てにしてるからな」
「うん」
ずっと、長い時間をかけて誠司は準備をしてきてくれたのだ。
誠司は、八月に三十歳の誕生日を迎える。その時までに起業することを目標にして……。
順調に、準備は進んだ。
「もうすぐ昼だし、トマトのパスタも作ってやるから」
「みんなにもね」
わかってるよと笑って、誠司が厨房に消える。
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