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第1話

 バックからの滑らかに悶える鮮やかな刺青 その背がしなる度に生きてているかのごとく龍が身を捩る その龍を押さえ付け追い詰めていく…まるで狩りをしているような感覚に興奮する  半身捻った横顔が、私を見た。湿った眼光は鋭く、捩じ伏せられながら反撃の隙を伺っていた。少しでも手綱を緩めようものなら噛み付かれる。撫であげられた髪を掴むとその美しい顔を青い畳に押し付けた。ガハッ…と息を吐き出す。続いて聞こえてくる歯を食いしばる音。  「声出せば楽になるのになぁ?」  愉しげな自分の声はこの状況に飲み込まれた興奮によるものなのか…それとも本能なのか。それすら分からなくなる。  自ら額を畳に押し付ける。その背中の龍が小刻みに震えていた。よもや、と思い息を潜めると聞こえてきたのは啜り泣きでも哀願でもない。喉を揺さぶる様な笑いだった。 組み敷かれ許しを乞うはずだった男が笑っているのだ。どれだけ汚しても穢れないその男の背中で龍が火を吐いた。沸騰した思考の中で私の手はその男の首にまわっていた。 掌に伝わる熱と湿り気、脈打つそこに指を食い込ます。笑い声は止まり代わりに洩れる苦しげな声。赤く染まる耳、首筋、眦…ああ、この龍は確かにここにいる。安堵にも似た思いから一瞬力を抜けば、白く血の気の引いた己の指がジンと痺れた。 巡る血液に首筋が赤く染まる。ぐるりと力を込めた通りに赤くなる。咳き込む振動に突き立てた内壁が悶えるように収縮して、弛緩する。 ゆるゆると腰を動かすと息を吹き返した背中の龍が捻れる。 後ろから突き上げられながらもその男の眼は強い光を失わない。喰い千切られるのは私の方だとでも言うのか。  男の眼に宿る強い光とは対照的に、背中の龍の眼には大粒の汗が浮かぶ。まるで泣いているかのように。  『こちらの龍のほうが正直だな』  そんな思考が伝わったか男の締め付けが強くなる。やはり喰われているのは私のほうなのだ。いいように喰われるのも癪だ。哀願じみた汗を眦に浮かべる竜に爪を立てる。広く厚い僧帽筋が一瞬間戦慄き、その震えが内部に伝染する油断すれば気をヤりそうで歯噛みした。この龍を完全に屈服させるすべを考えながらピストンが早まる。 畳目の痕がつくほど強く押し付けられた肩が微かに震える。この男の全てを蹂躙したいという思いが、新たな欲望に火をつける。鍛えられたその腰を掴み乱暴に引き寄せる。似つかわしく無い細い指先が何かに縋ろうとするかのように畳縁を引っかいた。 ガツガツと獣のように貪れば、浮き出た肩甲骨が羽のように動く。それはまるで龍が天に昇るかのごとく。 畳目を傷つけていた爪が私の腕を捕らえる。そこに刻まれていく数本の跡に酷く満足した。 引き摺り出し、再び押し込むと内壁がうねる。噛み殺した声が呻きになる。抗うすべもなく無様によがり狂う顔を見てやりたいと思いながら、腕にすがる手を解いた。髪に指を潜り込ませ、撫で付けられたそれを鷲掴みにする。無理に顔を引き上げるとだらしなく開いた口の端が微かに上がった。力を失わないその眼に背中が粟立つ。覆い被さるようにその舌を貪ると、口の中に鉄の味が広がった。捩じ込んで侵しても堕ちてこない歯痒さに組み敷いた男の頬を思いっきり張った。  どれだけ貪ろうとも屈しない瞳と押し殺される声。唇の端についた血を舐めとるその姿に、ぞくりと背が粟立った。背を走った震えとは逆に、腹から喉を突き上げたのは押し殺しきれない笑いと征服。欲しいのは地位ではない。自尊心の塊であるこの精神をへし折り、屈服させて跪かせたい。飼い慣らされた猫が欲しい訳では無い。牙を持つ獣を御してこそなのだ。 歯噛みする相手を貫く。無理やり拓かれた苦痛に歪む美しい顔。引き剥がしたのは身に纏うものだけではない。その事実に恍惚とする。蠢く龍に爪を立てる。堕ちてくれば良い、地まで。引摺り下ろし、這いつくばったその龍を飼い慣らせばどれ程満たされるだろうか。誓った忠誠心とは別の征服欲を刻むように、貫くスピードを上げた。  搾り上げるように内壁が狭まる。歯を食い縛った隙間から荒い息が盛れ出た。縊られた勢いに先に気をやったのは自分だった。狭い器官に飛沫が逆流する。知らず堅く瞑っていた瞼を開くと怜悧に嗤う顔が見えた。
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