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第4話

 一瞬、その身体が仰け反る。肉が肉を包む感触が下肢を震えさせる。充分な潤滑を持ったそこは柔く緩んでいるように見えて搾り取るように肉環で絞めてくる。息が詰まる。気をやりそうな眩暈。目の前が明滅して歯噛みした。掌の下、衝撃に開きかけた唇が、再び口角を上げる。戯れにナカを絞め、縊られる。  ほんの数時間前まで血を求め猛り狂っていた獣に喰われる。  消化しきれない衝動を全て満たせ、まだ足りないと求めてくる。腹を満たせさもなくば切り捨てると。更に奥へと誘われる。近くなったその眼には苦しそうな表情の男が映っていた。強い光を持つ鏡のような眼球をぬるりと舐めあげた。この行為が抗争の昂りを引き摺ったものだと分かっている。欲しいのは地位とか愛とか心とか、そんなものじゃない。この男の存在そのものだ。   あんたが存在する意味を刻み込んで、自分だけがそれを与えられる者でありたい。猛る自身を打ち付ける。  掌を離せば「ガハッ…!」と大きく息を吸い込んだ。  「イテぇ」  衝撃に声を発した癖に既にニタニタと挑発するように笑っている。股裏を支えた手の、指先に力を込める。硬い肉に爪が食い込む。「ッ……!」息を飲む。目の前に肉刺だらけの厳つい掌が大写しになる。  「ヤリ殺すッつーわりには優しい殺し方だな。なあ、オイ。」  顔面を掴んだ手が蟀谷を軋ませる。どうすればこの掌に堕ちてくるのか、落ちてくるのか。  「欲しいもんくれてやれるのは俺だけでしょうに」  眉ひとつ動かすことなく返事の代わりなのかぴしゃりと鞭を入れるように太腿を叩かれた。  「しっかり腰振れよ」  膝頭を掴みぐいとその躰の方へと押す。鋼のように強靭な四肢が柔らかくしなった。喰いちぎるかのような締めつけに逆らいながら引抜いては、また狭い肉環を押し広げる。腹側にある柔らかな器官、そこを無遠慮に狙い腰を揺らせば男の身体が一瞬跳ねる。  「これじゃ足りないんだろう?」  半身を寄せ、浮き出た鎖骨にギリッと歯を立てる。同時にしとどに濡れた陰茎に手を伸ばした。  「ああ、足りねぇ」  恍惚めいた眸を揺らし、触れるままに任される。にちゃついた音が結合部からなのか、陰茎からなのか判らない。歯に触れる肉の硬さ。舌で傷を拭うと手中の一物が跳ねた。鈴口に爪を立てると小さな呻きが聞こえ、胸中が震えた。この痛みを、呻きを自分が刻んでいると思えば堪らない。  熱くなったその肌をふと撫でた。半開きの双眸の奥から射るような強い光が届いてきた  「それじゃあ足りねえ、まだだ」と。見えない黒い影に追われる。掌につと力が入り強く握られた一物が更に硬くなる。躰がひくりと反応して、腹の中がうねる。快楽とは程遠い痛みの中にしか生きている証は存在しないのだ。  亀頭に爪を立て強めに引っ掻けば男の躰が大きくしなった。肉環の締め付けが更に強まる。己だけではない、この男もまた限界が近いのだ。意図して抜き差しを強める。仰け反り浮き出た肋骨に指を食い込ませ滑る陰茎を更に引っ掻いた。  「っ、あ…!」  男が声を僅かに洩らした瞬間、一気に自身を引き抜いた。鼻から漏れ出る吐息に苦いものが混じっている。怪訝と不満の入り交じった目がこちらを見据える。引摺り出したナニの先端でしどけなく開いた孔が開閉している。  「突っ込んで欲しい?」  自分こそ限界なのを気取られないように笑う。きりきりと食い込ませた爪に、陰茎の割目から脂汗のように体液が滲んだ。  「安い玩具の方がまだマシだ」  右の口角だけか僅かに上がるのが見えた。下腹部に集まっていた血が一気に脳へと駆け上った。脚を掴むとぐいと引き寄せる。鍛え上げられたその四肢はずしりと重い。  「無茶させてもらいます」    ひくひくと痙攣する孔を貫くようにいきり立ったモノを一気に突き立てた。

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