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第3話

 無意識に逃げようとする身体。抜き差しする指はそのままに男の胸に口を寄せた。大きく上下する先にある尖りに舌を這わす。苦痛を感じることで生きている実感を得られるのか…だからいつもあんな無茶な生き方をするのか。ならばその証を与えてやる。焦燥にも似た想いのままに主張するそこに歯を立てた。  がりとかじりついた瞬間に肩が痙攣した。力を込めた拳が、噛み締めた歯の合わせ目が痛みを教える。 生きた心地がするだろう?抗争では物足りない、戦場でなければ生きてるかちさえ見いだせない。そう言うかのような生き方に、いっそ、自分がこのどうしようもないドマゾ若頭を潰してしまいたくなる。  この世に生を受けた意味など考えたことも無い。ただ、この男のためなら命などくれてやっても良いと思った。誰かのために死ぬのでは無く、この男を生かすためだけに在りたいとさえ思ったのだ。 しかし、こちらの思いなど意にも介さず鉄砲玉の如く飛び出して行く。死にたいのならここで果てさせてやる。  実力で今の地位を掴み親父からの信頼も厚い…まさに刻んだ龍の如く昇ってきた男の望むものなど知らない。ただ退屈な生より苦痛を伴った死を選ぼうとする生き様が美しくも腹立たしい。その命、糞共にくれてやるくらいなら自分が飼い殺してやる。 「単純な男だな、てめぇは」  笑いを含んだ声にハッとした。嘲笑を含んだ物言いに掌で転がされている自分を見る。所詮どこまでも駒でしかない自分は、この煌と光る目に愚鈍で単純な生き物にしか映っていない。その事実が、いいえも知れない焦燥をもたらす。噛みついた胸の尖りをにじる。嘲笑は嘲笑のまま歪んだ。血の味。屈服させたい欲望だけがひた走る。  混じるのは互いの汗と荒い息、そしてひと呼吸毎に濃くなる空気。爪を立てるように強くその肌を擦る。痛みが生きた証なのだ。繰り返し爪を立てると、ゆるりと膝が外へと倒れた。龍がぶるりと震える。つい今しがたまで男の性器を咥えこんでいた赤い内壁が誘い込むようにひくと動いた。 ここに突き入れることは己の支配欲と性欲を満たすため。そう思いながらも、全てを見透かされ転がされている事実に眉を寄せた。分かっていても抗えない誘惑に屹立した自身を握りあてがう。 「今度はちゃんとイかせろよ、餓鬼」 僅かに腫れた唇がクッと上がるのを掌で押さえつけ、一気に腰を進めた。

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