「それにしても、お前のその顔……ああ、堪らぬ」 背後から聞こえてくるグルルルル、グルルルルという呻り声が次第に大きくなり、「もう、我慢ができぬ」という声と共に、佐助の中で暴れていた指が出て行った。 ぽっかりさびしくなったそこへ、指とは比べ物にならぬ熱さと質量をもったものが性急に宛がわれ、佐助に緊張が走る。それを察したのか、ふーふーと荒ぶる息を吐きながらも嵬仁丸はその強張りを解すように「力を抜いていろ」と佐助の尻を優しく撫でた。 その気遣いにほっと息を吐いたとたん、滾る灼熱がめりめりと佐助の体を割り開きながら入ってきた。 「く……はっ」 あまりの圧迫感に息が止まりそうになる。 「む……佐助……佐助……」 だが上ずった声で自分の名を呼ぶ嵬仁丸が愛おしく、なんとか受け入れようと懸命に息を吐く。 苦しい。じゃけど、これを乗り越えれば嵬仁丸様と正真正銘の番になれる。 苦痛に耐える声が漏れぬように、歯を食いしばる。 ところがみちりみちりと佐助の中を進んできた嵬仁丸の動きが突然止まったと思ったら、ずるりと佐助の中から出て行ってしまった。 え？どうしたん？おら、まだ頑張れるよ？ 戸惑ううちに体をころんと仰向けに転がされた。どうしたのかと見上げれば、嵬仁丸は優しい顔で微笑んでいる。 「あれでは、お前の可愛い顔が見えぬ」 手を伸ばして佐助の額や頬を優しく撫でる。 「私たちの交わりは子作りではなく、共にあるための契(ちぎ)り。愛ゆえの睦み合いだ。なのに互いを愛でずに交わるのは味気が無さすぎるであろう？」 もう一度頬を撫でてから、佐助の両脚を抱え上げ自分の胸にもたせ掛けた。そうして改めて入口に剛直を押し当てる。 先程一度受け入れているから、佐助の体は初めよりすんなり嵬仁丸を咥えこみ始めた。愛ゆえの睦み合いと言われて変な気負いが抜けたのかもしれない。嵬仁丸が佐助の屹立を大きな手で握りこむ。 「あ……ん」 親指ですりすりと裏側を擦られると、気持ちがよくて頭がとろんとなってしまう。 「ああ、嵬仁丸様ぁ……」 「やはりこちらがよいな。お前の蕩けた顔も可愛くてたまらぬ」 そんな風に言いながらも少しずつ佐助の体をこじ開けていく。だが先程と違って、与えられる快感に加え、嵬仁丸の顔を見られて安心するのか力(りき)みがなくなり、ゆっくりだが滑らかに入ってゆく。 「んん……あ、あっ」 嵬仁丸の手元からは溢れ出た先走りでくちゅりくちゅりと淫猥な音が聞こえ始めた。 時間をかけようやく自身を佐助に埋めた嵬仁丸は満足気に深く大きな息を吐いた。 「大丈夫か？」 全身にうっすら汗をかいている佐助をねぎらうように、耳や首筋を愛撫する。 「ああ、おらと嵬仁丸様、繋がっとるね……おらの中にみっちり嵬仁丸様が詰まっとる」 「ああ、一分の隙も無い程にお前に包まれている」 そっかあ、おらが嵬仁丸様を包んどるんかぁと嬉しくなってえへへと笑えば、佐助の中で楔がびくりと振れ、思わず腹に力が入ってしまう。すると、今度は嵬仁丸が悩まし気に眉を寄せ甘い息を漏らす。それがなんとも色っぽい。 「今日は嵬仁丸様の初めて見る顔がいっぱいじゃ」 手を伸ばし嵬仁丸の顔に触れる。 「それは私の台詞だ。だがもっといろんなお前を見せてもらうぞ」 そう言ってにやりと笑うと佐助の手をべろりと舐め、両手で佐助の脚を掴んだ。そしてゆっくりと律動を開始した。