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第115話
目覚めたとき、腕の中に佐助はいなかった。
まさかすべてが夢であったなど……すっと胸が冷えたが、表から佐助の朗らかな笑い声が聞こえてきてほっとする。
「あ、嵬仁丸様、おはよう!よう眠っとったから起こさんかったよ」
佐助の周りには沢山の獣たちが集まっている。
「みんなが、元気になってよかったねって言うてくれて」
確かに今日の佐助は顔色も肌艶も良い。佐助が、嵬仁丸の耳に口を寄せ小声で囁いた。
「ふふふ、やっぱり嵬仁丸様のアレには特別な力があるんでない?」
悪戯っぽくこちらを見上げる目がくりくりと可愛い。
「さぁて!今日は随分調子がええから、おしののおっ母や嵬仁丸様に任せっぱなしになっとった畑へ行って手入れをしようと思うん」
「私も一緒に行く」
「ふふ、言うと思った」
「体はきつくないか?なんなら、私が抱いて行っても……」
「あはは、それも言うと思った」
けらけら笑う佐助をひょいと担ぎ上げる。
「わー!」と驚く佐助にかまわず、そのままずんずんと山を下る。
「ちょっと、ちょっとってば」
暴れても嵬仁丸が降ろす気がないのが分かると、佐助はもぞもぞと動いて嵬仁丸の首に腕をかけ、ちゃんと抱きやすい体勢に収まった。
沢山の獣たちの冷やかしに「可愛い佐助を甘やかすのは番である私の特権だ」と開き直ると、皆がますます笑う。
「もう……なんね?」と顔を赤くする佐助に「たまには私も掌 の上にお前を載せたいのだ」と答えれば、ますます佐助は首を傾げて困惑している。
その様子が楽しくてニヤニヤしてしまう。
ああ、今日もよい一日になりそうだ。
< 完 >
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