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第5話

それから数日。 毎日毎日相変わらず 僕に擦り寄ってくる背の高い男達や 鋭い視線を投げつけ 影でコソコソ言う可愛い男達はいるけれど 辛い日常にお昼の楽しみな時間を見つけた。 授業が終わる。 誰かに声をかけられる前に 急いで教室を出て 人目が無くなったら裏庭に走って向かう。 するとそこにはベンチに座る狼さんがいる。 ウキウキして走ってここまで来たのに いざ声をかけようとすると テンパってなんて声をかけたらいいか 分からず慌てていると それを分かっていたかのように 僕に声をかけてくれる。 「よぉ、隣座れよ。」 「うん。」 「いい加減お前から声をかけろよ。」 「うん…頑張る…。」 「頑張るって…まぁ お前らしいからいいけどよ」 なんて、少し会話が出来るようになった。 僕は上手く喋れてるかといえば微妙だけど 少しづつ狼さんと親しくなれたと思う。 更に距離が近くなったと思う訳には お弁当を作るようになったことも 理由の一つに入るだろう。 狼さんは元々前から お昼を食べてなかったようだけど 一度僕が作った卵焼きをあげてみたら 気に入ってくれたみたいで 次の日は狼さんの分のお弁当を 作ってみたら喜んでくれたので それから毎日作っている。 「これ……お弁当です…。」 「あぁ、サンキュ。」 なんて、もらってくれる時は素っ気ない。 でも。 「本当にお前の卵焼き美味いよな。」 そう言って褒めてくれる。 そんなちょっとの言葉が嬉しくて 毎日しんどい小言も 耐えられるようになった。 食べ終わったら 美味かったってまた褒めてくれる。 その後はいつも目を閉じて眠り 予鈴が鳴ったら教室に帰り その日の楽しみが終わる。 そんな毎日。 今日もそんな1日だと思ってた。

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