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第13話
大の負けず嫌いな弦もこれは流石に怯んでしまい、「……こわい」と、ちょっと嘆いた。
そのへの字に曲がった眉毛を見た響が、突然吹き出した。
「ぷはっ!! あははっっ!!!」
初めて響の笑顔を見た弦は、その破壊力に胸が締め付けられ、頭の中がお花畑状態になった。
胸がギュンギュンする……何これ、……初めて…と、ゴリゴリの関西人が乙女になるほど、響は色々カリスマで、沼にハマりそうで怖くなった弦は、「俺…! 帰るわ!」と、一言置いてやっさんの眠る家へと、マップを見ながら、まとまらない頭で迷いながら走って、そして迷った。
「ここどこーーー!!!」
マップの意味が全くない弦であった。
なんとかかんとか、やっさんの家にたどり着いた時はもう10時になっており、玄関を開けて家の中に入ると、やっさんは起きて2LDKのリビングでタバコを吸っていた。
「え、遅くね?」
「迷ったんや」
「マップあるのにどうやって迷うの?」
「うっさいなぁ!」
「顔赤いけど響にやられた?」
「はっ?!! ちがっ……違うくない〜!! 何あいつ! 俺の事掘ろうとした〜!!」
違うと虚勢を張ろうと思った弦だったが、今後の事もあるので素直になった方がいいと、雀の涙ほどの脳ミソで思った。
泣きつく弦を見てやっさんは吸いかけの煙でむせたらしく、笑いながらむせているので、涙とヨダレで弦はドン引きだった。
「あいつがキス魔やって知ってるって事は、やっさんもやられたって事やろ〜?!」
その言葉でさらにむせたやっさんであった。
「あ、あいつは覚えてねぇから大丈夫だよ」
「ちゃうやん!! あいつは覚えてないかもしれへんけど、俺ら覚えてるやん!! めっちゃキス上手いし、俺人生初の男行くとこやったわ。あぶなー」
「ぶっ……、ゴホン、いや、お前寝てないだろ? こっちの部屋空けたから存分に寝とけ」
「あ、うん。ありがと。けど興奮覚めん寝れるかな」
「ぶ…ぶふぉ」
こいつは一々面白いやつだとやっさんは、身体が震えるくらい笑いを堪えていた。
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