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第10話

 身体の拘束が解かれ、ようやく自由になった上体を起こすと、ディスクの上で縛られていたオレの身体はあちこちが痛む。颯真は何とも言えない表情でお互いの白濁をハンカチで拭い綺麗にしてくれた。 「……たく、何考えてるんだよ」  本当なら一発殴りたい気分だ。 「別に、したくなったからしただけだ」  なんなんだそれは……あまりにあっけらかんとした答えにオレは怒りを通り越して呆れる。オレの寿命を返せ! 「司」 「なに」  オレが少々ご機嫌斜めな声で返事をすると、有無言わさず身体を引き寄せられ唇を奪われる。 「んんっ……ん」  これ以上好きにされたらオレの寿命がいくつあっても足りない。深まる口付けにオレは抗い無理矢理身体を引き離した。  「やめろって」  お互い見つめ合う格好のまま数秒。颯真はオレの顔を引き寄せて囁く。 「愛してる」  恋人の思わぬ一言にオレの顔は一瞬にして真っ赤。まともに顔すら見られず応えられない自分。それでも彼はクスっと笑って済ませた。本当、普段は好きだとも言わないくせに、平気な顔して五文字が言えるそのメンタルオレにはない。オレは顔から熱が引くのを待ち、ようやく言葉を見つけた時だった。ポケットに仕舞い込んだスマホが鳴り響く。  「出ろよ、仕事だろ?」  オレは迷った結果電話に出ると、それを見た颯真は黙ってオレの髪をくしゃりと触り、じゃあなと小さく耳元で呟いてそのまま会議室を出て行ってしまった。オレが彼の五文字に応えるのはいつになるのだろうか……。

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