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第9話

颯真は震えるオレを抱きしめ深いキスをする。オレは自分の心臓の音と口付けに眩暈を覚えた。 「なんか聞こえたか?」 「え?何も」 「気のせいか」  早く、早く何処かへ行ってくれ。二人の会話を遠くに感じながら足音が去っていくのを待った。その間もキスは深まり、息も吐けぬほど舌は絡まって、隙間からどちらともつかない唾液が伝い落ちた。 「んんっ……っ」  暫くして廊下の気配は完全に消え去り、騒がれなかった事からバレずに済んだのだと安堵した。だが、溜息を吐く暇などない。颯真は見計らったかのように重ねた唇を離して激しく律動した。 「ぁっ……ァァ……はぁあ……やっ……ふぁあ」  息を殺してなんてもう限界だった。オレは堰を切ったように声を漏らす。颯真は微かに笑ってオレの弱点を突き身体にキスの雨を降らせた。 「ああ……そ……まっ……ぁっ……もう……ゆ……して」  許して……その言葉すら出ない。奥深く硬い先端が何度も行き来して、擦られる度濡れた音が静寂な中に鮮明に響く。視覚を塞がれたオレはいつも以上に、内部と耳で快楽を味わされ既に限界を迎えていた。 「や……ぁぁ……もう……イ……くっ……」  オレがそう言葉にした瞬間、彼の動きは速まってオレは叫ぶように果てた。遅れて颯真の僅かな声が耳に届いた時、硬いそれは抜かれ、熱いものが腹に吐き出された。  互いに息は絶え絶え。オレが力なくテーブルの上でぐったりしていると、颯真の身体がオレの上に覆い被さった。 「はぁ……解いて……」  オレがようやく絞り出した言葉、颯真の表情は見えなかったが、少しの間を置いて彼はオレを解放した。

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