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第15話 隠し事Ⅱ
「痛いッ!やめろって!」
俺のパンチを受けて後ろを向く正臣。
その隙に浴室へと入った俺は、中から内鍵をした。
ここは中からカギが出来るんだ。
「へっへっ、ざまあみろ。」
全く何を考えてるんだか.........。
ノンケの考える事は理解出来ねぇ。
ゲイの俺と一緒に風呂へ入るとか。そんなの、ヤる目的の時しかしないっての!ゲイバーでナンパされてホテルに行ったのが一ヶ月くらい前。それから今まで、健全に生きてきたってのに........。
アイツは全然分かってないんだ。男同士で、裸の付き合いが普通って思ってるのか?やってらんない!
「ハルミ―、オレは外で待ってるからな!具合悪くなったらすぐに出るんだぞ?!」
- まだ云ってる.........。
「分かったから!裸でいるのはやめてくれよ?!すぐに出るから!」
頭からシャワーを浴びながら、ついでにシャンプーも流しながら、俺は正臣に声を掛ける。
ギュっと目を瞑って頭を擦れば、なんだかクラクラしてくるが、そんなのは大した事じゃない。
とっとと済ませて早く上がろうと、急いで身体も洗う。
本当にあっという間にシャワーを終えて、浴室から出るとバスタオルで身体を拭いた。
ついでに歯磨きも済ませてしまうと、そのまま部屋に向かおうとドアを開ける。
見ると、正臣は床に座り込んで背中を壁に預けたまま目を閉じていた。
(なんだよ、眠ってんのか?バカなヤツ。こんなとこでうたた寝したら風邪ひくのに。)
「おい、正臣。風呂、出たから。ベッドに行くぞ!起きろ。」
「...............ん、」
目を擦りながらボヤっとした顔で俺を見上げると、正臣がニッと笑う。
その顔が、妙に人懐っこくてまたもや俺の胸にぐさりと突き刺さる。
- この、人タラシが..............!
正臣の手を掴むと身体を起してやり、俺はベッドの方に向かった。
布団をめくって中に潜り込むと、はぁ~、っと溜め息を吐く。
正臣も俺の隣に潜り込んで、同じようにはぁ~っといった。
「あの扉の色見たら、なんかヤバイ所なんじゃないかって思ったよ。でも、中は普通のバーだったな。良く行くのか?」
目を閉じた俺に、正臣が質問してきた。
「まあ、普通のバーだけど.......、あそこは大原先輩が良く行くらしい。俺は初めて行った。.................もう寝る。」
「..........ああ、...........ごめん。おやすみ。」
「おやすみ、......................今日はありがとう、心配かけて、...............ごめん。」
それだけを云うと、俺は布団を頭から被った。
一応は迷惑を掛けたし、謝るべきだよな。コイツの突拍子もない行動は別として、まぁ、身体を心配してくれてるわけだし.......。
それにしても、大原先輩.........。
なんで俺を置き去りにするかな~。マズイっしょ?正臣がノンケだって云っとくべきかな.........。
眠気で朦朧とする頭でそんな事を考えると、明日店に行ったら先ず大原先輩に話さなければ、と思った。
もし、何かの拍子に俺がゲイだってバレる事になれば、俺はもう正臣の顔を見れないし、同級生の誰とも会えないと思う。
今までひた隠しにしてきた事が水の泡になっちゃうんだ。ちゃんと、口留めしておこう。
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