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第14話 隠し事。
_____ッドーン!!
思い切り正臣の胸を掌で押しやると、ドアから一歩も入れない様にして後ろ手にドアを閉めた俺。
「痛っ、てーなーッ!!何すんだよ!!」
よろける足で踏みとどまれば、壁に背中をぶつけてしまい正臣が俺を睨む。
「あっ、ごめんごめん。力が入り過ぎた...........、ホント、ごめん。」
頭を下げながら、俺は正臣の腕を掴むと謝った。
兎に角ここは穏便に......
早くこの場を離れなくては!
焦る俺に、正臣は背中を撫でながら眉根を寄せると、「いったい何なんだよ。お前、セキュリティ対策全くダメだな!携帯、他人に使われても分かんないって。ライン電話、知らない人が出るから焦るだろ?!」という。
「え?.........ああ、さっきの......。えっと、大原先輩が出たんだってな?俺、酔いつぶれてたみたいでさ。」
「ったく、恐ぇよ!知らない所で何やってんだよ!店の先輩だから良かったけどさぁ、知らないヤツとかに連れて行かれたらどうすんだよ!」
正臣が、いつになく保護者の様な事を云うから、俺は耳を疑ってしまった。
何の心配をしているんだ?俺が誰に連れて行かれるって????
「女じゃあるまいし、誰もどこにも連れ込まないって!あははは、」
腹を抱えると、正臣の背中にバシンと手を当てた。
「痛ってぇな。叩くなよ!」
背中をさするとまた俺を睨むが、その顔はなんだか頬が色づいて見える。走って来たのか頬が高揚しているようで。
「酔いつぶれて意識ないから早く迎えに来てって言われてさぁ、どれだけ心配したと思ってんだよ。」
くちびるをプイっと尖らせて、俯きながら歩く正臣が、なんだかいじらしくなった。そんなに心配してくれたんだ?!
「............悪かった、自分でもホント、こんなに酔いつぶれるなんて初めてで。ごめん、迷惑かけたな。」
素直に謝ると、隣でこちらに目を向ける。チラリと俺も横を向けば、視線が絡み合って一瞬立ち止まった。
.............こういうの、どうしたらいいのか...........。
付き合ってる同士なら、迎えに来てくれて嬉しいとか、もっと好きになっちゃうって、そんな風に思うのかもしれないが。
生憎、俺たちはただの同級生。一応は、元親友の俺を心配してくれたんだろうけれど.........。
「マジで、心配させんな!」
そう云うと、正臣は俺の頭をぐしゃりと撫でた。髪が乱れるとか、そんな事を考えるより先に胸の奥がジンジンと高鳴る。
一瞬で、押し込めた感情が蘇りそうになると、俺は又必死に蓋を探して胸の内を見られない様に務めた。
「だ、から~、心配いらないって。俺、男だし.......。」
そう云うと、また歩き出す。
金曜の深夜。なのに繁華街は賑やかで、サラリーマンの姿も多く見られる。
「正臣、お前何処か行かなかったの?女は?それとも、家に戻るとか、さ。子供にだって会いたいだろ?!」
そんな事を訊けば、スタスタと歩みを進める正臣がフッと鼻息を鳴らした。
「ハルミがオレの子供の心配するって.......、なんか可笑しい。それに、オレ、女遊びはしても同じ女とは寝ないよ。」
「..............へ?..........」
っどんだけモテ報告?
んな事は訊いてない!
だからヤリチンは!!!!
「あ、っそう。ならもう心配はしねぇ。子供の事も訊かない。」
俺はちょっとふくれっ面をしながら云った。せっかく心配してやってんのに。
正臣は良くたって、子供が可哀そうだよ。気づいたら父親がいないなんてさ.............。
歩く事15分程で、無事に家までたどり着くと、すぐに俺は浴室へと向かった。
玄関から入り、無言のまま正臣に背を向けると、シャワーだけでも浴びようと思った。
「シャワーは明日の朝にして、もう寝ろ。」
正臣が俺の背中に向かって云う。
でも、俺は無視をして洗面所へと行く。
今日の汚れは今日の内に流してしまいたい。美容師は髪の毛を触る仕事で、案外知らないうちに髪の毛が服に付いてしまったりするんだ。それに今夜はバーで飲んで、酒とタバコの匂いも染み付いてるし。
「おい、訊いてる?」
無言の俺に向かって正臣が声を荒げる。
「つぶれる程酒呑んで、そんなんで風呂なんか入って倒れても知らねぇぞ。」
「そんな歳じゃないよ。大丈夫だし。」
俺は洗面所で服を脱ぎながら、聞こえる様に言った。
下着を脱いで、浴室のドアを開けた時、「なら、オレが一緒に入って見張っててやる。」
そう言った正臣が、真っ裸のまま洗面所に入って来る。
「バ、バ、バカか?........やめろって、入ってくんな!!」
俺は肌を隠すものもなくて、取り敢えず片手でイチモツを隠しつつも、正臣の肩をもう片方の手でバシバシと叩いた。
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