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第66話 イきたいのに...!

 _____声を聞かせろ、って? 本気で云っているのか?! こんな男の喘ぎ声を本気で訊きたいだなんて.......... 「や、..........だ。」 正臣と絡めた指を握り締めると俺は囁いた。 息があがってしまうと、朦朧とした意識の中でもなんとか自制心を保とうとする。 バーで知り合ったナンパ目的の男とは違う。 快感を得るだけの相手じゃなくて、本気で恋した男に抱かれているんだ。女を知っている正臣には俺の喘ぎ声なんて耳障りに違いない。萎えてしまったらどうしようと、そんな事が頭をよぎる。 「ハ、ルミ.........イ........気持ちいぃ?」 俺の腰を持ち上げながら打ち込むと、正臣は耳元で囁く。 ぁ...................はぁ、.............はぁ、ッ........... 気持ちいいと、思い切り叫んでしまいたい衝動を必死で押さえると、俺はただ首をこくこくと振るだけだった。 今の俺にはそれが僅かな抵抗の印。寝てはいけない男とシてしまった。 脳裏にミキさんの笑顔がチラついて、苦しいぐらいにイケずにいる。 正臣の昂りは俺の奥まで届いているっていうのに..................。 あっ、あっ、..........................んんっ、 声を殺しても漏れ出てしまう俺の吐息に合わせる様に、正臣もまた熱い息を吐く。 ベッドの軋む音は止まずに、俺の脳裏に浮かぶ顔もかき消されるほど突かれると、半ば放心状態になった俺は意識を飛ばした様だった。 気付けば背中を正臣の身体に覆われて、窮屈そうに並んで寝ていた。 重い瞼を開けて、辺りを見廻す。 ここはやはりホテルの室内。正臣の部屋で、俺たちは貪るように互いを求め合うと寝堕ちてしまったのか。 なんとなくカラダが重いが、そっと正臣の腕から抜けるとバスルームへ行った。 ランドリーで乾燥するはずの俺の服は、バスタブの淵に掛かったまま。 それを手にすると、水気を絞って棚に置く。 それからサッとシャワーだけ浴びると、俺は正臣のスウェット上下を借りてランドリーへ行こうと思った。 一応ドアが閉まってしまわないように、ストッパーをすると足早に廊下を歩く。 深夜のこんな時間にうろつく人間は誰もいない。シンと静まり返った廊下がやけに不気味だった。 乾燥機をセットして部屋に戻ると、ベッドの上でスヤスヤと眠る正臣の顔を眺める。 - 幸せそうな顔、してんなー こんな俺を抱いて、正臣は幸せなんだろうか................。

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