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第81話  子供の為に。

 俺に正臣を攻める資格があるのか____________? ずっと好きだった正臣に、告白が出来なかったのは俺も同じ事。 あの頃、俺が勇気を出して正臣に好きだと告げていたら、この現状は違ったものになっていたかも。 でも、互いに告白は出来なかった。 保身に走って、周りの目を気にして............ 自分が他人とは違うという事に、負い目を感じていたんだ。 今更過去へは戻れない。それなら、この先は互いの道を別々に歩んだ方がいいんじゃないのか?! _______________それが出来れば、こんなに胃が痛くなるほど悩まないよな。 大原さんに背中を押されて、逆に抵抗するかの様に正義感ぶって........... 俺は本心では正臣を奪い取りたいんだ。なのに、正臣には自分から家族を捨てろと詰め寄るみたいな事を云ってしまう。 「正臣、........本気で俺と暮らしたいって思ってる?」 「ああ、勿論だ。叶わぬ願いだと分かっても、ずっと胸の奥底に秘めてきた想いをハルミに告げる事が出来て、オレは図々しくもその先を求めてしまう。家族という檻を自ら作ったのはオレなのに。」 『檻』という言葉を聞いて、俺の胸は締め付けられる。 自分の想いを完全に閉じ込めるつもりだったのかと。『檻』の中に閉じ込めるのは、その身体か心か.....。 「ミキさんと会った時、彼女は離婚の話が出ているって言ってた。正臣には感謝しているって。それなら、離婚の話を受ければいいんじゃないのか?どうして拒否するんだよ。」 前にも訊いたが、もう一度確認したかった。二人の間に恋愛感情が無いのなら、家族ごっこは辛いだけじゃないんだろうか。 それとも..................、一緒に暮らした事で愛情が芽生えた、とか? 「涼には、...............涼には責任を持たないといけない。オレの勝手な思い込みでアイツを不幸にすることは出来ないから。父親がオレじゃないって事を知る日が来るかもしれないけど、その日までは父親の役目を果たしたいと思うんだ。」 そう云って正臣が視線を落とす。 そこは揺らぎない気持ちなんだろうな。すべては涼くんのため、か...................。 ちょっとだけヤキモチを焼きたくなる。 一歳の赤ん坊に、この俺が負けてしまうだなんて。悔しいけれど仕方が無いのかもな。 「................、正臣の気持ちは分かった。でも、もう少し考えさせて。」 俺はそう云うと、ゆっくり立ち上がり正臣の肩に手を掛ける。

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