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迎えに来る人

 夜中に、目が覚めた。  彼の部屋を追い出されてから、夜中に目を覚ますことは間々在った。  しかし、今日は違った。  「――…」  襖の奥から声無き声が聞こえる。  僕はいぶかしみ、思い至って布団を跳ねのけた。  かふかふと、小さな咳の音が聞こえた。  襖を明け放つ。  彼は弓なりに仰け反り、ぜいぜいと激しく息をしていた。  「!!!」  布団の傍らに駆ける。  夜着が乱れる。    どうしたらいい。   どうしたらいい。  彼の手が苦しげに、寝巻の合わせを引き掴む。  もがき、身体をもんどり打たせる。  僕は何もできなくて彼を見ていた。  どうしよう。どうしようどうしよう!  どうしたら!  「…な…るな、来るな…」  とたん、目の前が真っ白になる。  なんで。  「あー…来る、来る、な」  何で縋ってすらくれないのだろう。  「げふっ、げっ!」  「!!」  仰向いたままの彼の口から、血液が溢れた。  僕はもうすっかり恐慌してしまった。  血液が喉に詰まらないようにとか、起してあげるとか、背中をさするとか。  そんなの全然思い浮かばなくて、  「…よう…」  其の声で、正気に戻された気がした。

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