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第6話 親愛なるだれか

「ただいま」 誰もいないとわかっていたが、毎日それを欠かさないのはただの惰性だ。 鞄を部屋の隅に置いてベッドに倒れこむ。熱はまだ下がっていない。冷たい布団の感触が心地いい。 携帯のバイブが鳴る。 画面を見ると出会い系で知り合った男からだった。今日の逢瀬を楽しみにしている、などという容だ。 ……さて、どうしようか。 明日はまたいつものように朝ここをでて学校に向かわなければならない。熱がある今、行ったら熱が下がらないのはわかっている。 『明日、新しいの付けてきたら生徒指導だから』 何度も頭の中で繰り返されるこの言葉。 どうして、なんて考えたくもない。ただ、いつもと違う自分を受け入れたくない。 そうだ、いつもはこんなことで迷ったりしないはずだ。 熱いため息をついて風呂場へ向かう。 妖しく光るネオンも蔓延するこの据えた匂いももう慣れたものだ。 人の往来の中に今日の相手の男を見つける。 「こんばんは」 「ああ、君がわたる君か、よろしくね」 予想よりずっと若くて、ガタイも良い。優しそうな男だ。 「若いね、高校二年生だっけ」 「うん、お兄さんもとてもかっこいい」 「お兄さんなんて歳じゃないよ」 照れくさそうにな笑顔がピンクの光に照らされる。それに返すように笑顔を作る俺の眼にも、ピンクの光が映る。 いつも通りの夜に、いつもとは違う体温。それも全部、いつもより少しいい男が相手なら悪いことなんて何ひとつない。 「ね、はやくいれて……」 男がもったいぶるように一物をこすりつけてくる。濡れそぼつ熱いそれに期待を抱いて腰を揺らす。男は一度低く唸ってはゆっくりいれこんでくる。最後に深く一突き、陰毛が尻に当たる。 「はぁ、あっち……溶けそう…」 満足そうに一息ついて、背中にキスを落としている。背中がぞわぞわしてチンコが痛いくらいに張り詰める。 甘ったるいセックスは嫌いじゃないが。 「じらさないで……はやく……」 腰が勝手に揺れてしまう。もっと、もっと奥をついて欲しい。 「はは、いいね…」 腰をがっちりつかんでゆるゆると律動を始める。 「はぁっあっ、ぅんん…あっ……」 ゆっくり追い詰められる快感に震える。 あぁ、この感覚だ、何にも代えがたいこの感覚が俺は好きなんだ。 「あっ、はあ……あっ、ああっ」 「…わたるく、きもちい……こんなのはじめて…は…」 たまらない、と男は腰の律動を速めた。一物が奥にまで届いている。 「はっ、そう…かよ、あっ…あああっ…」 あつい、体から湯気が出そうなほど、熱が中で燻っている。 ばつん、ばつんと肉が当たる音が響くたびに頭の痛みがひどくなる。 「はうぅ…あつ……あつい…」 タガが外れて涙がとめどなく溢れた。 「泣くほど気持ちいい…?かわいいね……」 首に吸い付いてくる男が、愛おしそうに手をまわす。俺に比べて男の体温が低くて、触られた所が気持ちいい。気持ちよくて泣いているわけではないが、そんなこともどうでもいい。もっと追い詰めるように抱いて欲しい。 『ちょっとは我慢しろよ』 「はは…我慢なんて……」 「わたるくん…?」 してたまるか…俺は俺の、好きなように… 「な、もっと激しくついてくれよ……」 自室のベッドで目を覚ます。時計を見ると朝七時だ。 汗をぐっしょりかいている。どうやってこの家に帰ってこれたのか、自分でも覚えていない。 「行かなきゃ…」 シャツを脱ぎながらベッドを抜け出る。 足元も覚束ない。どこかで薬を買わないと。

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