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第46話

その後、分娩室に移動すると言われ、分娩室の入口で一縷と別れた。 立ち合い出産だけは嫌だった。 それまでのかっこ悪い僕を見られるだけでも嫌だったのに、これ以上かっこ悪い所を見られたくなかった。 出産はかっこ悪くないと思う。 むしろ、生命誕生の神秘を行う神聖な儀式だと思う。 だけど、こればかりは僕の美意識にかかわること。 何人たりとも口出しはさせない。 分娩台に乗せられて、本格的に陣痛がひどくなってきた。 お腹が裂けるんじゃないかと思うくらいの痛み。 叫ばずにいられなかった。 今の自分に余裕があればよかったんだけど、そんな余裕はあっという間に霧散した。 穴という穴から液体が漏れたと思う。 たぶん下の方からは漏れてないと思う。 自信ないけど…。 『もうすぐよ!いきんでっ!』 先生の声が聞こえ、最後の力を振り絞っていきんだ。 おぎゃぁ! 声がした。 『元気な男の子よ。おめでとう』 助産師さんがまだ血に塗れた我が子を抱いて寄こしてくれた。 (一縷に似てるかな?) 生まれた我が子を見て少し余裕が出てきた。 『お風呂に入れて、新生児室に連れて行くわね』 「お願いします」 後産とかいろいろあって、さすがに疲れた。 病室に戻ってベッドに横になると、泥のように眠った。 久しぶりに落ちるように眠りについた。 学生の頃とか、毎日寝る間も惜しんで実験をしていて、気付くと寝落ちていたりしたものだった。 そんな感覚だった。 助産師さんが一縷を呼んで来てくれると言っていたけど、一縷を待つこともできそうにない。 今日くらいは許してくれるよね。 僕、すごくがんばったよ。

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