48 / 50
第48話
side蒼
いつ眠ったのか覚えていない。
目を開けると、一縷が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「おはよう、あお。お疲れ様」
「おはよう、いち。見てきた?」
「あおに似て、すごくかわいかった」
「いちに似て、すごくかっこいいの」
親バカ炸裂してる。
今からこんなことだと、数年後とかどうなっちゃうの…。
先が思いやられる。
そう思っていると、朝食の時間が来た。
出産を終えた人への朝食はすごかった。
かぼちゃのスープ、鮭のムニエル、鯛のマリネ、黒毛和牛のステーキ、国産小麦100%使用のパン、3種から選べるケーキ。
ホテルの朝食並に豪華で、しかも、使用される食器は有名ブランドが使用されているのが売り。
これ目当てでこの病院で出産する人も多いと聞く。
朝食を食べ終えてしばらくしてから、一縷と二人で新生児室に向かった。
数多くいる赤ちゃんの中でも、我が子はすぐに見つけることができる。
これが親ということなんだな。
「まるでいちみたいだね」
「どちらかというと、小さい頃のあおだろ」
どちらに似ているか、新生児室の前で言い合う親が二人。
さすがに迷惑だったのだろう。
助産師さんが迷惑そうな顔でこっちを見ていた。
ちょうど授乳の時間だったみたいで、授乳させてもらえた。
初めての我が子への授乳。
練習で他の子にあげたことはあるけど、さすがに我が子となると手が震える。
何とかできて、少し安堵した。
次は一縷の番。
しかし、一縷は練習無しのぶっつけ本番だったこともあり、我が子の顔をミルクまみれにしてしまった。
最後の方は拒絶の態度を見せられて、少し落ち込んでいるように見えた。
「最初はそんなものだよ」
「でも、最後は嫌だって蹴ってきたぞ?」
「練習あるのみだよ。僕も協力するから」
「がんばる…」
ショックだったのは一時的なもので、今はうまく授乳をするという使命感を携えた目をしていた。
ともだちにシェアしよう!