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第49話

数日後、我が子と一緒に退院することができた。 自宅に戻り、一縷と大会議を開いた。 題して、子供の名前をどうするか会議。 いろいろ入院中考えた。 時間だけは腐る程あったから。 だけど、いい名前が思い浮かばなかった。 音がいいからと思っても、漢字にすると字画が悪かったりして、決定には難航した。 一縷とも久々に大喧嘩して、最終的にはお互い口を碌にきくことなく、一縷は就寝した。 僕は頭を冷やすついでにリビングの片付けをした。 全部片付いた頃にはヒートアップしていた頭は冷え切っていて、一縷に悪いことをしてしまったと反省した。 時間も遅く、名づけで頭をフル回転させて疲れてしまったので、寝室に向かうと、一縷は既に寝ていた。 すぅ、すぅ、と規則正しい寝息を立てている。 (明日起きたら謝ろう) そう決意してベッドに潜り込んだ。 『あのね、私子供ができたの』 『本当に!?』 『うん。お医者様に診てもらったから確実よ』 『ありがとう。もちろん産んでくれ』 『あなたとの子よ。産むつもりよ』 『まだ両親は知らないんだろ?』 『えぇ…教えたら堕ろせって言われてしまうわ』 『それは嫌だな…』 『それでね、気が早いかもしれないけど、名前どうしようか?』 『ん~そうだなぁ…』 『男の子なら私が、女の子ならあなたに付けてもらいたいのだけど…』 『いいね。そうしよう。産まれるまでに考えておくよ』 『男の子なら右京と名付けたいの』 『どうして?』 『私たちの親のように古い考えに囚われた偏った物の見方しかできない人間になってほしくないの。人格に優れた社会の中心となる子になりますようにって意味を込めて、右京と名付けたいの』 『いいね、右京かぁ』 体が興奮状態にあるのか、寝付いてから数時間しか経過していない。 でも、夢は覚えている。 前世の夢。 まだ幸せな時間を二人で過ごせていた頃の記憶。 あの時心中したのは二人だと思っていたけど、三人だった。 お腹に子供までいたとは知らず、我が子をここまで待たせてしまった。 (ごめんね、右京…) 一縷が起きたら、夢で出てきた我が子の名前を提案してみようと思い、朝食の準備に取り掛かった。 早起きしすぎたので、少し凝った物を作った。 ちょうど一縷が起きてきた時、完成まであと少しだった。 「おはよう、いち。朝ご飯もうすぐだから待ってて」 「おはよう、あお。手伝うことあったら言ってくれ」 昨日のことがあって、一縷はまだ戸惑っているようだった。 なるべくいつも通りに振舞う。 これが今できる僕の重要任務。 そうじゃなきゃ、一縷が気にしてしまうから。 いつになっても一縷は喧嘩したあとは僕のことを気にする。 それは変わらない、一縷のいい所。 二人で朝食を食べ終え、片付けを済ませて、のんびりした時間が訪れた。 「「あのっ!」」 二人でハモった。 「あおからどうぞ…」 一縷が先を譲ってくれた。 これは好機なのかもしれない。 夢で見た我が子の名前を提案する。 「子供の名前のことなんだけど…右京ってどうかな?」 一縷が驚いた顔をしている。 「昨日夢で前世を見て、あの時付けようとした名前だったんだって」 「俺もその夢昨日見た」 一縷も同じ夢を々タイミングで見ていた。 それなら驚いても仕方ないよね。 「あの時、三人で川に飛び込んだことになるんだね」 「そうだな。この子はまた俺たちの元に戻ってきてくれたんだな」 「絶対に幸せにしてあげないといけなくなったね」 「あぁ。右京、いろいろ待たせてごめんな」 一縷が立ち上がり、右京が寝ているベビーベッドの側に行く。 それについて僕も右京の元へ行く。 「俺、これからもっとがんばるから」 「僕もがんばるね」 右京を散々待たせたダメな親だけど、これから挽回するからちゃんと見てて。

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