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第36章 絡まる想い。空回る心1※
「ねえ……貴弘、おじさまに気づかれちゃ、ダメですよ」
「……わかっている。総、お前の方こそ、今度はしくじるなよ」
瀧田は頬を膨らまして
「やだな。僕はしくじったりしない。雅紀が逃げ出したのは、貴弘が早瀬暁を、もっとちゃんと押さえこんでおかなかったからでしょう?」
「言うなっ。最初からあいつが秋音だと知っていれば、あんなヘマはしなかったんだ。くそっ…」
貴弘は悔しそうにシーツに拳を叩きこむと
「父さんがその気なら、俺にだって考えがある。あんなどこの馬の骨とも分からない女が産んだ弟なんかに、雅紀も遺産も奪われてたまるかっ」
瀧田は、怒りに震える貴弘をちらっと見て首をすくめた。
……どこの馬の骨、ねぇ……。
「とにかく。僕はこれ以上おじさまを怒らせたくないので、もしバレたら責任は、あなたが1人で引き受けてくださいね」
「ああ。構わんさ。雅紀はほとぼりが覚めるまで、島の地下室に閉じ込めておく。あそこは父さんも知らない俺だけの隠れ家だ。気づかれはしない」
瀧田はうっすらと微笑んで
「そう……。じゃあ、僕のとっておきの知り合いを、紹介してあげますよ。貴弘はおじさまの言うことを聞いて、誠実な態度で2人と和解しておいて下さいね」
貴弘は瀧田を見ると、眉をあげ無言で頷いた。
……くうねるところにすむところやぶらこうじぶらこうじ…
「……あき……らさぁ……ん……ね…きてぇ……?」
……うおっ。でた~おねだりっ……つうか、だめっ揺するのナシっ。……くっ…
ぶつぶつ口の中で唱えながら、いっこうに動こうとしない暁に焦れたのか、雅紀は両足を踏ん張って、腰を上下に揺らし始めた。
熱く絡みついた雅紀の中が、複雑にうねりながら、暁のものを擦りあげる。
……くっそ…っ
このままでは、主導権を握られた状態で絞り取られるっ。
暁は、雅紀に負けじと腰を下から突きあげ始めた。
「あっあ……んうっん……あっあっあっあーーっ」
「……どう、よ?な、これ、いい、だろ」
雅紀の細腰を、両手でガッチリ押さえつけ、少し浮かした状態で、前立腺を何度も狙い撃ちした。
「ああんっああっ……あ゛ーーっやあーーっんうっあ゛っあ゛っや、いや、だめ……っい゛っいいーーっ」
ガクガク震えてのぼりつめた雅紀とほぼ同時に、きゅううっと締め付けられた暁のものも、中で膨らみ、一気に弾けた。
強烈な快感が、脳天まで突き抜ける。暁は呻き、雅紀の身体にぎゅっとしがみついた。
自分のものがびくびくしながら、雅紀の奥に何度も精を注ぎこんでいるのが分かる。
繋がった部分がドロドロに溶けて、雅紀とひとつに混ざりあっていく気がした。
気怠い心地よさに包まれ、ふわふわとした気分で、暁の胸に頬を寄せて、心臓の音を聞いていた。
最初は早鐘を打っていた鼓動が、だんだんゆっくりになり、やがてトクン、トクンと一定のリズムを刻み始める。
「な……。雅紀。俺と一緒にさ、仙台……行かねえか?」
重たくなりかけた目蓋を押し上げ、雅紀はきょとんとした顔で、暁の顔を見た。
「ん……え……え?なに?」
「お前今、落ちかけてただろ…」
暁が穏やかに笑ってそう言う。雅紀は目をぱちぱちさせて
「あーうん。一瞬寝てた……。ごめんなさい。暁さん、もう一回言って?」
「仙台に一緒に行ってくんねえか?……って言ったの」
「え……。んと、いつ?」
「明日」
雅紀は目を見開き、
「明日って、俺……会社が…」
「アール企画か……。お前さ、仕事に復帰するの、もうちょっと待てよ。お前に枕営業みたいな仕事を、させようとした会社だしな」
「えっ……。やっぱり……そういうことに……なるんです、よね……」
「残念ながらな。少なくともお前の直属の上司は、瀧田の思惑を分かった上で、お前を差し出したようだな。田澤社長が調べてた中に、その部長の名前があってな、本人をつついたら呆気なく吐いたらしいぜ。どうやら瀧田に、何か弱味を握られてたらしいな」
雅紀は顔を曇らせて
「そう……だったんですか……。部長が……」
「まあ今回のことが、その部長の一存だったのか、会社側が全て把握した上でのことだったのかまでは、まだ分かんねえけどな」
雅紀は困惑した表情で、目を伏せた。
それはそうだろう。自分の所属している会社だ。
仕事自体、雅紀は気に入っていた様子だったし、やり甲斐も感じていたようだった。
暁だって、今の仕事や事務所は、自分の拠り所であり、自分の居場所と呼べる大切なものだ。
「とにかく、あんなことがあった後だ。会社の方が、今後お前をどう扱うか気になるしな。社長が今手まわして、いろいろ調べてるからさ、もう少し、様子を見た方がいいだろうな」
「そう……ですね……」
「そんな顔すんなよ」
しょんぼりしてしまった雅紀の髪を撫でてやると、雅紀は暁の胸に頬を寄せた。
「入社して3年経って、ようやく仕事、面白くなってきたばかりなのにな……」
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