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絡まる想い。空回る心2

暗い顔になり、しきりに考えこんでいる雅紀の頭を、暁はぽんぽんとして 「そういやさ、瀧田の屋敷の場所、教えてくれたのって、お前の会社の先輩たちなんだぜ」 雅紀ははっとして顔をあげ 「え?あ……っもしかして佐武先輩?」 「そ。それと瀧田には妙な噂があるって、お前のこと心配して、社長に情報くれたのは、杉田っていう先輩な」 「杉田先輩が……」 「仙台から帰った俺を、2人して駅で待っててくれてさ。地図を渡してくれたんだ」 塞ぎこんでいた雅紀の顔が、少し明るくなった。 「そっか……。先輩たち、俺のこと心配してくれて…」 「上司はクソだったけど、お前、先輩には恵まれてんな。2人ともいいヤツそうじゃん」 雅紀は嬉しそうに頷き、 「そうなんです。2人とも俺が入社した時から、すっごいお世話になってる先輩で」 「そっか。かなり心配してたからさ、電話して元気な声聞かせてやれよ」 雅紀は笑顔で頷くと、充電していた枕元のスマホを取り、電話をかけ始めた。 「俺、飯の支度してくるな」 暁は雅紀ににっこり笑いかけると、立ち上がってキッチンに向かった。 「もぉ~。暁さんのバカっ」 「こら、暴れんなって。味噌汁がひっくり返るっつの」 暁は慌てて、雅紀の前に置いた味噌汁椀を避難させた。 「なんで俺がバカだよ?」 「だって。佐武先輩、知ってた…」 暁は雅紀の赤い顔を見て首を傾げ、 「ん~?何を?」 「だから、とぼけないっ。俺と暁さんのこと。こ……っ恋人だって…」 暁は雅紀から視線を逸らし 「えー。だって本当のことじゃん?」 「そうじゃなくてっ。先輩に言ったって、どうして教えてくれないんですかっ。俺、今電話で、めちゃくちゃからかわれたんだからっ」 暁はそっぽを向いたまま、頭をぽりぽりとかき 「そういや言ってなかったっけな」 雅紀が唸りながら暁を睨み付けた。 「わざと黙ってましたね?」 「んなわけないじゃん。あの佐武ってヤツは、お前いじって遊んでんだろ。いいね~愛されてて」 雅紀はぷりぷりしながら、炊飯器から茶碗にご飯をよそって、暁の前に置き 「杉田先輩は何も言ってなかったけど……もちろん知ってる……?」 「ん~。佐武くんにお前との関係を聞かれてさ、2人の前で恋人宣言したからな。……あ、杉田先輩っていやぁさ、雅紀」 「……何です?」 暁は雅紀の顔を、急に真面目な顔で見つめ 「あいつ、お前のこと、好きだろ」 雅紀は途端にきょとんとして 「……は?」 「は?、じゃねえよ。お前こそトボけんな。杉田くん。お前に惚れてんじゃん」 雅紀はポカンと暁を見て、 「何言ってんですか。杉田先輩が?俺のこと?もぉ~そんなことあるわけないし」 今度は暁の方が呆気にとられ、苦笑している雅紀に 「え、お前それ、マジで言ってる?」 「当たり前です」 自信たっぷりに言い切られ、暁はまじまじと雅紀を見つめた。 ……うわぁ……鈍感にも程があるだろ。佐武くんはもちろん気づいてたよな……。つーか、初対面の俺でも気づいたってのに。杉田くんも可哀想に……。 「何、変な顔して見てるんです?ね、冷めちゃうから早く食べましょうよ」 今日の夕食のおかずは、塩麹に浸けておいた鶏肉を、生姜とにんにくをすりおろした特製の醤油だれに更に漬け、片栗粉をまぶして揚げた竜田揚げだ。 雅紀は唐揚げや竜田揚げが大好物らしく、大皿に山盛りで出してやったら、釘付けになった。 「はいはい。んじゃ、頂きますのちゅうは?」 雅紀は竜田揚げから暁に視線を移し、顔をしかめた。 「うわっ。何その嫌そうな顔、ひっでーな。それが愛する彼氏に向かってする顔かよ」 「彼氏……」 今度は恥ずかしそうに頬をゆるませる。 ……なんつーか……。ここまで感情が素直に顔に出るヤツも珍しいだろな。佐武くんがからかいたくなるのも無理ねえし。 雅紀は唇を突き出す暁に、もじもじしながらちゅっとすると 「いただきますっ」 両手を合わせて、いそいそと箸をとった。 「あー食ったぁ。結構量あったのにペロッといけたな。お前も思ったより食えてたじゃん」 雅紀は幸せそうに微笑んで、 「こんな美味い竜田揚げ、俺、食ったの初めてかも。ね、暁さん、漬け汁の作り方、後で教えてください。あ、あとね、茄子の煮浸し?あれも美味かった」 「茄子のはさ、めちゃ簡単な手抜き料理だぜ。ヘタとって、縦に包丁で8本くらい切れ目入れてさ、ラップしてレンジでチンして、すりおろした生姜と鰹節のせて、最後にだし醤油かけるだけ。 竜田揚げの漬け汁は、配分メモしてラインで送ってやるよ。……あ、そうだ」 「え。なに?」 「いや。ラインで思い出した。俺、スマホ壊されたんだった。予備にガラケー持ってるんだけどさ、やっぱスマホもないと超不便だな。明日さ、ショップつき合ってくれるか?」

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