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ふたたびの恋6※
「いいぞ。イっても。俺も、そろそろ、限界だ」
ぐっぐっと少し荒く腰を突き上げる。その度に背中に堪らない痺れが駆け抜けて、暁はぎゅっと目を瞑った。
「んぁ……っいっく……っあっあっあー…っ」
ふいに雅紀がひときわ大きな声をあげた。猫が伸びをするように反り返り、全身を震わせる。手の中のペニスから熱い飛沫が迸った。中でぎゅうぎゅうと絞るように締め付けられ、暁もくっ…と呻いて熱情を解放した。
がっくりとシーツに沈み込んだ雅紀の上半身に、柔らかく包みこむように覆い被さり、暁ははあはあと荒い息をついていた。怪我の療養で体力がなくなっていたせいもあるが、雅紀との初めてのセックスは、何もかもが強烈過ぎた。
男同士の行為にさほど抵抗のない自分にも驚いたが、雅紀の普段の姿とのギャップの激しさが凄い。暁だった時に、雅紀とこんなセックスをしていたのであれば、あの濃厚な淫夢を見たのも納得出来る。
……まずいだろう。あの色っぽさは……。
表情、仕草、声、反応。全てが妖艶過ぎる。
普段、どちらかというと、年よりも幼く見える雅紀だけに、抱いている時の別人っぷりが半端ない。
暁は、自分の下でくったりしている雅紀の顔をのぞき込んだ。まだ快感の余韻を引きずって、とろんとした表情の雅紀は、暁の視線に気づいて顔をあげた。
「秋音……さ……ん…」
「どうだった。……よかったか?」
「ぅん……。……よかった……です…」
雅紀は恥ずかしそうに微笑んだ。ズキュンとくるような可愛らしさだ。暁は雅紀の唇にキスを落とすと
「おまえを抱いた夢だよ」
「……へ……?」
「夢を見たと言っただろう?おまえの。つまり、こういう夢を見たんだ」
首を傾げていた雅紀の目が、徐々に見開かれる。意味が通じたのだろう。じわっと目元を染めた。
「あ。そう……なんだ…」
暁はちょっとバツが悪そうにそっぽを向き
「夢の中のおまえも色っぽくて綺麗だったが、実際はそれ以上だな」
「……っ。秋音さん……も……気持ちよかった……?」
「ああ。よかった。溺れそうで少し怖い」
暁の言葉に雅紀は嬉しそうに微笑むと、もぞもぞと動いて仰向けになり、暁にぎゅうっと抱きついた。
「……好き……。大好き…」
「俺もだ。だからもう、勝手にいなくなったりするなよ。そばにいろ。俺から離れるな」
「ぅん……」
こくんと頷く雅紀の頭を、暁は優しく撫でた。
「上の空だな。どうした、総一。気分が乗らないか?」
「考え事です。なんだか腑に落ちないんですよね」
「例の可愛いお人形さんか?結局、元の鞘に戻ったってことだろう?」
「元の鞘、ねぇ…」
瀧田はベッドからおりて、ナイトテーブルの上のグラスを掴んで一口舐め
「戻る鞘なんて、最初からなかったはずなんだけど…」
「新しいお人形を探したらどうだ?最近ずいぶん大人しいじゃないか」
瀧田はふんっと鼻を鳴らし
「僕はあのこがいいんですよ。あの男が邪魔に入らなければ、もっといろいろ楽しめそうだったのに…」
男はベッドの上で首をすくめた。
「へえ。珍しいね。君が1人の人形にそこまで執着するなんて。そんなにいじめ甲斐があるこなのか?」
瀧田はふふふ……と思い出し笑いをすると
「そうですね。外見は今までで一番理想的かな。もう少し若かったら完璧だけど。感度と反応は絶品。もっと時間をかけて仕込んだら、最高のdollになりますよ」
男は身を乗り出し
「ふうん……君がそこまで言うとは……。かなり興味をそそられるね。貴弘くんのものになる前に、私も一度会いたかったな」
瀧田は男の方を振り返り、意味ありげに微笑んで
「会ってみます?あなたがその気なら、手配しますよ」
「いや。私は構わないが、貴弘くんが許さないだろう」
瀧田は口の端を上げて
「貴弘のことなら大丈夫。僕の方で何とでも出来ます。ねえ?僕がお膳立てするから会ってみてください」
男は含み笑いをもらすと
「悪いこだねえ、君は。分かったよ。君の可愛いお人形…篠宮雅紀くんに、会ってみようか。私が最高のdollに仕込んであげるよ」
瀧田はご機嫌な顔でくすくす笑って、グラスの中身を一気に煽った。
隣で穏やかな寝息をたてる暁の横顔を、雅紀はぼんやりと見つめていた。
秋音に抱かれた。暁じゃない、秋音にだ。こんな夢みたいなことが現実になるなんて…。
丁寧に愛してもらった情欲の余韻が、まだ身体の奥に残っている。
思えば不思議な恋をしている。
初めてこの人に会ってから、もう10年近く経つ。
初恋の相手で、でも叶わない恋と諦めて離れた。
再会したこの人は記憶を失って、早瀬暁という別の人間になっていて、でもまたどうしようもなく惹かれて恋に堕ちた。
想いが通じて恋人になれた暁は、実は初恋相手の秋音で、でも記憶をなくして暁は消えてしまった。
そして叶わないと諦めていた秋音が、自分を好きだと言ってくれて、ふたたび恋人になれた。
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