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揺らめく記憶4※
「だってさ……またおまえに会えたんだぜ。嬉しくってつい、はしゃいじまったんだよ…」
しょんぼりしてしまった暁の声に、雅紀はため息をついて振り返り、暁をぎゅっと抱き締め
「もう……しょうがないな。そんな落ち込まないで。俺、怒ってないから。……それより、おかえりなさい、暁さん」
「……っ。まさき~」
暁は嬉しそうに雅紀に頬ずりをした。
「ふうん……。じゃあ目が覚めた時は、もう暁さんだったんだ」
「んー。だと思うぜ。ものすっごくナチュラルに俺だったからさ、ちょっと焦っちまったけどな」
「だったら今は、秋音さんが眠ってる状態……?」
暁はソファーに座って、雅紀を抱っこしながら首を傾げ
「んー。多分な」
「あ……そういえばね、暁さん。秋音さんは、暁さんの存在を感じてなかったですよ」
「……みたいだな。ずるいよな。身体ほとんど独り占めしてんのにさ。少しは俺みたいに、閉じ込められてる気分、味わってくれっての」
口を尖らせる暁に、雅紀も頷いて
「不思議ですよね。暁さんは秋音さんの存在、分かってるのに……」
「ま、分かってる俺の方が、不思議現象かもしんねえけどな。……それより雅紀、なんか着ろよ。寒そうだぜ」
「……それ、暁さんが言いますか?自分で脱がせたくせに…」
ちろっと横目で睨まれて、暁はそっぽを向いて雅紀を膝からおろし立ち上がると、押し入れに行って、例の彼シャツを引っ張り出してきた。
「な?これさ、着てくれよ」
ぴろんとシャツを目の前に広げる暁に、雅紀は苦笑して、それでも素直に受け取り袖を通した。暁は満足そうに目を細めると、再び雅紀を抱き寄せた。
暁は、制限時間のある逢瀬を惜しむように、雅紀を片時も離さない。ソファーに座って雅紀を対面で膝に跨らせ、時折ぎゅっと抱き締めたり、キスの嵐を降らせている。雅紀はくすぐったくて身をよじりながらも、暁のしたいように甘えさせていた。
「今更だけどさ、そのキスマーク……どうすっかな。秋音が見たら、さすがにまずいことになるよな」
「うーん……。暁さんのこと、正直に打ち明けるしかないのかな……。秋音さんが寝てる間に、誰か他の人につけられたって方が問題だし」
「だよな。……ほんとに悪かった……。ただなあ。秋音がその事実、受け入れるかどうかだよな……。俺の存在、まったく感じてねえならさ、そう簡単には信じねえだろ」
「……ですよね」
ソファーの上で抱き合って座りながら、2人でうんうん頭を捻っていると、ふいに暁ががばっと顔をあげた。
「……っ。いい考え思いつきました?」
「おう。あのな、動画でさ、秋音に俺がメッセージを残す、つーのはどうだ?このキスマークは俺がつけたんだから、安心してくれーってさ」
雅紀は首を傾げ、その様子を想像してみたのか、微妙な表情になり
「や……それは……どうかな……。それ、実際やったら、秋音さん、ものすごいショック受けちゃいますよね?」
「んー?そうか?ショックなんか受けるか?んなにデリケートなのかよ、俺の分身は」
首を捻る暁に雅紀は呆れて
「いや……普通にショックでしょ。知らないうちに、自分が勝手に行動してる姿を動画で見るとか……。デリケートとかそういう問題じゃないと思うんだけど…」
……でももしそれが暁なら、あっそういうこともあるんだーなんて、あっけらかんと受け入れてしまうような気もするけど……。
「そっか。名案だと思ったんだけどなあ…」
暁は弱り果てた様子でため息をつき、また頭を捻り出した。それを見つめていた雅紀が、ポツリと呟いた。
「もし、秋音さんに聞かれたら、俺、正直に暁さんのこと、打ち明けるから。信じてもらえるまで、きちんと話すから。だから暁さんはもう悩まなくていいです。それより暁さん、またいつ沈んじゃうか、分かんないんですよね?次いつ出てこれるかも、分かんないんですよね?」
「んー?……うん。まあな…」
「じゃあ、今から俺のこと……抱いて」
「……へ?」
雅紀はじわりと頬を紅く染め、驚いている暁からすいっと目を逸らして
「暁さんが……嫌じゃなければ…だけど」
「ばっか。嫌な訳ねえだろ。でも……いいのか?……俺がおまえ……抱いても…」
遠慮がちに聞いてくる暁の口を、雅紀は指でそっと押さえ
「そんな……哀しい言い方、しないで。暁さんは俺の恋人でしょ?俺のこと、抱いていいに決まってるから」
「雅紀…」
暁は雅紀の身体をぐいっと引き寄せると、その唇に自分の唇を重ねた。
「……んぅ……ぁ……あ……ん……んぅ…」
シーツに縫いつけられ、キスマークをひとつひとつなぞるように、丹念に暁の愛撫を受けて、雅紀は掠れた声をもらした。暁の唇と舌が触れるたびに、その場所から蕩けるような快感が生まれ、全身に広がっていく。
暁の舌が、既に硬く突き出た胸の尖りをちょんちょんとつつく。まるでスイッチを押されたように、雅紀の身体がぴくんぴくんと跳ねた。
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