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97.告白
「俺の……っ! バレてんだろーがッ!?」
「………………」
声は返んない。
顔も見らんない。
「そうだよ俺!」
う、あ~~~っ!
勢い止まんねえっ!
「おっ、おまえのことすっ、すっ! すすす好きなんだよっ!」
ぐぁぁぁぁぁっカミカミっ!!
けど言っちまった言っちまった言っちまった!
言っちまったよもう!!
「悪かったな!! くっそ、文句あっか!!」
くっそ! くそ、くそーっ!!
「……いや」
低い声が降った。
つかつかゼンゼン顔上げらんねえ、超近いし腕つかまれたままだし!
せめて腕離して欲しくてもがいたけど、ゼンッゼン離れない。てか逆に両腕つかまれて、さらに身動き取れなくて、したら丹生田の顔が、覗き込むみたいに─────すぐ、近くに。
ときめくとかそんなの以前に、もうコレで終わりだって、もう二度とチャンス無いって思ったら
ずっとずっとこうしたくて出来なかった、何度もついやっちまいそうになって、イヤイヤイヤとかガマンしてた。
なのにこんな近くに来た
─────おまえが、悪い───!!
丹生田の唇に、
ぶつかるみたいに、
唇押し付け……アタマ真っ白
腕つかんでた手の力が緩む。
今度はコッチから、ひたすら唇押しつける
だって……
触れたらもうガマン出来なかった。ずっと、ずっと、ずっとこうしたかった、触れたかった、丹生田の……唇─────
だけじゃねえ、腕も肩も首も胸も、ずっとずっと、ずーっと! 触れたかったんだ!
寝てるときに、ちょい触るくらいしか出来なかった。バレたら嫌われたら、そんな感じでずっとガマンしてた。んなのダメだって、嫌われたくねえから、ダメだって自分に言い聞かせて、めちゃめちゃ耐えて耐えて耐えまくってた。
首や肩や後頭部や、ずっと触りたかった丹生田に触りまくって、夢中でキスを続け、あちこち触りまくる流れで丹生田を抱きしめる。
唇触れてるだけじゃガマン出来なくて、唇の狭間に舌伸ばしてみる。なぞるみてーに舐めて、したら唇が少し開いて、そっから熱い息が……舌滑り込ませた。中も熱い。
したらぬるっと……
丹生田の舌、え、丹生田も?
めちゃキツく吸い上げられる。
ンで気づいた。めちゃめちゃガッツリ抱きしめられて………る?
マジで? か? マジで? え? なに?
でももう、きっとコレが最初で最後
ガァーッとアタマん中駆け巡るのはそんなんと、丹生田の感触。そんだけ
ずっとずっと触りたくて、ずっとずっとずっと我慢してた丹生田に抱きしめられて
なんか分かんねえけど、分かんねえけど
もう、もうもうもう、なんも考えらんない
思いっきり抱きしめ返し、思いっきりくちの中、舌で探りまくる。
ああ、丹生田だ。
コレ丹生田だ。
丹生田にキスしてる、嘘じゃねえ、俺、今、丹生田にキスしてる。
俺、丹生田にキス―――
そう考えたら、真っ白だった頭が、真っ赤になってく
つか抱きしめる腕の力がちょい緩んで、ただただ夢中だったのが、ちょい、考えられるように……余裕はねえけど、丹生田の舌が、ぬるっとねちっこく絡みついてるとか、丹生田の手が俺のケツ揉んでるとか。
こっちも、やっぱ背中とか肩とか腰とか首とか、動き回って触りまくってんだけど、丹生田は逃げねえ、つかくち吸い上げられて、舌の根が痛いくらいで、思わず「んう」声漏れた。
くちの中、丹生田の舌と吸い上げが止まる。
つか俺、てか丹生田も、鼻息めっちゃ荒くなってるし、わやわやだし、でも息止めたら死ぬし、こんなチャンス、もうねだえだろうし、触りまくっとくし。
てかずっと妄想してたけど、その通り、いや想像以上に肩も首もめっちゃ逞しくて、触り心地最高で、もうアタマん中熱上がって真っ赤なまんま。
そんで真っ赤なアタマは、今まで二年と四ヶ月、ガマンしまくりだった欲望に従う。
手が自動的に丹生田の腹を這う。Tシャツの上から腹筋を撫で下ろすと、腹が緊張を示してピクと細動する。そのまま手を下ろしてく。ジーンズの前、禁断の場所に、自動的に手が伸びて─────
ベルトを超えたところで、丹生田の身体全体がピクッと揺れた。全身が緊張、てか身体が硬直した。ビビって手は止まる。
─────僅かに残った理性が警鐘鳴らす。
だよな、ダメだよなここ触っちゃ、後戻りできねえ……
つか既に戻れ無くね?
─────けどアタマは欲望をがなり立てる。
触りたい! 直に触って撫でたりしたい!
……けどいいのか? いいのかな?
でもコレ最後のチャンスなんじゃね?
なら触りたい! いっぺんでイイから触っときたい!
……けどいいのかな?
葛藤してたら、唐突に唇が離れた。
ハッとして目を上げると、丹生田がじっと見下ろしてる。
なんだろ、今まで見たこと無い、睨むような、怖いくらい真剣な目。
なんでか背筋にゾクッと走るもの、ナンカ分かんねえけど、ビンビン感じながら、くっそ真剣な眼差しを、ただ見返した。
動きも息も止まる。手はベルトの上で止まってるし、残る腕で抱きついてるまま。
けど、けど丹生田は、嫌がってるとか驚いてるとか、そんな感じじゃない。離れようとしてない。じっとこっち見てる。
じゃあ大丈夫かって思ったり、でもビックリしてるだけじゃねえかって、そうも思えてわけ分かんなく……えーっと
えっとえっと、てコトはイイのかな? うん、もしかして良んじゃね? やっちゃう? だよな、それしかねえよな?
なんてアタマん中でいいわけしつつ、目を見たままゆっくり息吐き出した。
丹生田がひとつ、まばたきする。
じっと見返しつつ、指がそろそろ撫で下ろしていく。ジッパーの上から触れる指が硬いものを感じ取る。丹生田はビクッとして少し腰を引いた。手は追いかける。丹生田が息を詰め、首と顎が緊張する。けど逃げない。
息詰めて、じっとしてる。
目を見つめながら、そろそろとジッパーを下ろした。
でもやっぱり、丹生田は真剣な睨むような眼差しで見下ろしたまま、じっとしてる。
ゴクリとつば飲み込む音がめちゃ響く。耳に心臓あるんじゃ無いかってくらいドキバクのまま、隙間から指を侵入させる。
硬いものに触れた。熱い。指先がジンジンしてきた。
丹生田の喉仏がゆっくりと上下する。
「…………いいのか」
囁くような低い声。
なにが?
むしろそれってコッチが聞きたいことじゃん? とかちょい混乱。
だって指はずっと丹生田の触ってる、つか既になでなでしてんだけど逃げねえし……だからやっちゃってイイのかな? なんて聞きたい。
なにを? ってナニをだよ!
指先はもう勝手に動いてる、下着の上じゃ満足出来ないつう感じで自動的にさすさすしちまってて、丹生田の息が少し荒くなって、ガバッと抱きしめられる。
ふう、ふう、みたいな鼻息が髪にかかって、「いいか、藤枝」と低い声が耳元で囁いて。
つかこっちが聞きたいんだっつの! ああああああ~、もう、もうもうもう!
「俺!」
テンパったまま叫んでた。
「好きで! その、めっちゃ好きで! ずっと触りたくて」
丹生田はくちを少し開いて、呆けたみたいに見開いた目で見下ろしてる。
うわあ、こんな顔もカワイイ……とか思ってる自覚も無く、丹生田の肩を両手でつかんで、また唇を押し付けた。したら丹生田の腕が背に周る。
唇が触れたのと抱きしめられたのと、どっちが先か……分かんねえ。
分かんねえまんま唇押し付ける。伸ばした舌に、舌が絡んでくる。吸い上げる。吸われる。
夢中でキスするアタマの片隅で、理性が囁いてる。
イケるならヤりたい。めっちゃヤりたい。けどいいのかな? つかやり方とか、なんとなくは分かるけど、下手したら怪我とか、それマズいよな?
葛藤は欲望に勝てず、抑えらんない勢いで、ひたすら唇押し付けて触りまくる。背中から撫で下ろす手が、筋肉の確かな熱を感じ取っていく。唇は荒い息を漏らしてる。丹生田の息もめちゃ荒い。何度も唇を覆い、覆われ、吸い上げ、吸い上げられ。
手はいつのまにかケツまで降りて、そこを握るみたいに揉んだのは無意識だった。マジ気づいたらやってて、したら無理矢理肩をつかんで離された。
さぁっと血が引いてく。
(引かれた! さすがにケツ揉んだのまずかった!)
ギュッと目を閉じ、唇をきつく噛む。
好きなのは嘘じゃねえ、一個も嘘なんて言ってねえけど、けど。
告るくらいで、あとキスくらいでやめとけば良かった! なのに勢いで触りまくっちまったから丹生田が引いた!
アタマん中わんわん騒がしく、汗カンガン吹き出し、力抜けてた手は自然に落ちて、ちょい震えて、混乱して、ガックリ顔が下向いて、もうダメだ。ダメだダメだダメだ─────
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