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98.やってやる※
「……藤枝」
低い声が降ってきた。
ダメだ、もうダメだ。完璧引かれて、もう友達つきあいも無くなる。
きっと帰ったら部屋を替えてくれって丹生田は頼む。もしかしたら寮出るかも。そうだ、だって丹生田、今は奨学金受けてっから部屋借りるくらい出来るはずで
──────────だったら
「俺さ」
言葉と共に下向いたまま、目だけ開いて唇噛みしめる。
「引いたかも知んねえけど、俺丹生田のこと、その、エッチしたい感じで好きで」
「………………」
「だから、一回でいいから」
もうダメなんだったら、もう二度とチャンス無いんだったら、だったら─────
くそ、くっそー! ビビってんじゃねえ、言っちまえ!
ギュッと目を閉じ
「一回でいいから!」
怒鳴った。
「俺とエッチ……」
喉が潰れたみたいになって、コレじゃダメだと目を開く。
「……なこと……してくんな……い」
けど続く声はビビって消え入りそうになっちまう。ンでもコレが最後のチャンス。恐る恐る顔上げて、カッと限界近くまで目を見開いてる丹生田の顔が、ビックリするくらい間近にあってビクッとしちまう。
「……かな……?」
なんとか言い切った、けど、丹生田の喉から、ぐうう、と変な音が聞こえてビビる。
えっ? もしかして吐きそうとか? そんな気持ち悪い?
またパニクってきて手や唇がわなわな震えてきた。
したら丹生田が眼を細め、射貫くみてーに睨むみてーに真っ直ぐ俺見て、そんで唇が、少し震えて、開いた。
「……分かった」
低い声が聞こえた。
「……え?」
確かに唇は動いてた。
けど、顔変わんねえし、幻聴かと思う。
「シャワーを浴びた方がいいか」
「…………」
しっかりこっちを見下ろして、ハッキリと丹生田が言った。
だから、しっかり、見返した。
「いらねえ」
しっかり頷いた丹生田は目を伏せ、黙ってTシャツを脱いだ。
速攻でジーンズも脱ぎ、下着にも手をかけて目を上げ、ボーッと立ってるのを見て責めるような顔をした。
「あっ」
あわくってシャツのボタンを外す。
「ご、ごめん」
なんて言いつつ急いで脱ぎ、ジーンズとパンツも下ろして素っ裸になったら、ちんこ勃ってて焦って両手で隠し、速攻ベッドに潜り込む。シーツにくるまって、ホッとしつつ見ると、丹生田はもう一方のベッドに座って、膝の間に置いたリュックをゴソゴソやってた。
「あの」
声かけると、ビクッと顔上げる。
「なに、してんの」
怯えたような丹生田らしくない目つきは「……いや」すぐに伏せられ、ものっそ真剣な目でまたリュックのぞき込んで取り出したなんかを手の中に隠し、フルチンで立ち上がってベッド脇に立った。
鍛えた身体はめっちゃキレイで、風呂とかで見るのとなぜか違う、なんて思わず見とれつつ、股間に隆々と勃ってるモノまで見ちまって、ゴクッと喉鳴らした自分に焦り、なにげなく目を顔に向ける。
丹生田は横たわる俺のこと睨む様な目で見下ろしてた。またゴクッとつば飲み込んでたら、すぐ目を逸らしたんで、ちょいホッとしつつ、シーツを頭からかぶってドキドキしてた。
つうか丹生田のデカいな。
つか勃ったとこ見たの初めてだし、つか人様の勃ったの見たの初めてだし! つうか少なくとも俺のよりデカい、かなりデカい、なんて思いつつ、あれ、男同士のエッチってアレだよな、ケツの穴使うんだよな? えっとどうやんのかな? なんて考えてたらシーツが引きはがされた。
「うわ、なんだよっ」
咄嗟に丹生田に背を向け、身を丸めた。
つうか丹生田の身体と比べたらめっちゃ貧相だし、色々人並みだし、せっかく勃ってんのに色々萎えたらヤバいし……え?
背中を、撫でてる。
丹生田の手が、なにか確かめるみたいに、ゆっくりと背を昇り、首筋を撫で、肩から腕を撫で下ろしていく。なんかめっちゃ優しい手つきで、あ~くっそヤバい、めたくそドキバクする。
「……あの、丹生田?」
丹生田の手が肌を撫でる感触に、心臓がどんどん拍動を高めていくのに声は返らず、深く吐く息が背中にかかる、てことはめっちゃ顔近いンじゃね? つかどんどん鼓動が高まって、このまんまじゃ心臓壊れるかもってくらいで、ちょっとやめてくんないかな? つうか丹生田の温度が近い、近い、近いし!
「えっと、その…」
「大丈夫だ」
声が、ビックリするほど近くから聞こえた。耳のすぐ後ろ、そこに息がかかる。
また背を撫で下ろしていった手がケツを撫で、さっき俺やったみたいに、イヤもっと力強く、ギュッとつかんだ。
「ええっ? ちょ」
「大丈夫だ、藤枝」
「な、なにが……ひゃ」
思わず声を上げたのは、ケツに冷たいものが触れたからだ。
「なにし……」
「大丈夫だ」
背中に体温を感じた。耳に髪の毛が触れ、首筋に丹生田の頬が当たって、心臓ドキバクで(近い、近いよ)と焦りつつ、(イヤ近くていいのか、エッチすんだから)などと考えていると、「大丈夫だ」低く呟くような声が続いた。
「大丈夫ってなにがっ?」
「学んだ」
呟きは首筋に語りかけるようで、そこに息がかかり、ビクッとしちまいつつ「なにを…うひゃっ」言いかけたけど、ケツに冷たいモノが落ち、情けない声を上げた。
「学んだんだ。やり方」
「へ? つか、え?」
動揺してる間にケツの中になにかが押し込まれていく。
「なっ、なにっ!?」
「指だ。俺の指だ。大丈夫だ」
それはおずおずと奥へ進んでいき、中で蠢いた。
「なんっ」
変な感じ、変な感じだ、なんだ、なにが
「大丈夫だ。藤枝に悪いことはしない」
ちょい必死な声音で、「大丈夫、大丈夫だ」とか言い続ける丹生田の指が、奥へゆっくりと埋め込まれてく。
え、ええっ!? つまりコレって
「俺が掘られんのッ!?」
中の指の動きが止まった。
「駄目か」
「え、いや」
「駄目か、藤枝」
首筋に、丹生田の息がかかる。なんだかめっちゃ荒い息で、はぁはぁ言ってる。自分がテンパりすぎて気づかなかった。けど、けど、
「駄目なら、やめる。もう二度と触れない」
首筋に触れた柔らかいものが、唇なんだと分かったのは、しゃべるたびにそこに息がかかるからだ。思わず後ろに手を伸ばし、丹生田の腹から下へ撫で下ろす。ハッキリと猛ったものが、そこにあった。
さっき見た、あのデカいモンは、まだギンギンに勃ってて、思わず握ると、一瞬息を詰めた丹生田が「……済まない」と呟いた。
「えっ……」
「……藤枝……」
低い声は、なんか切ない感じで、少し震えてて、なんか、なんかすげえ悲しそうで。
唇が、言葉無く首筋に触れて、耳まで動き、そこに震える息をかけてから、指が名残惜しそうに中で蠢き、ゆっくりと抜け出そうとして─────
「いい」
指の動きが止まった。
「……ふじ……」
くそ、そんな悲しそうな声出すなよ。俺も男だ、くそ、やってやる、じゃなくてヤられてやるっつの!
「イイつってんだろ。やれよ」
それまで、おずおずと進んでいた指が、グッと奥まで差し込まれ「あぅっ!」思わず声を上げると
「済まない、つい」
慌てたように言うくせに、丹生田の指は奥で蠢いて止まんない。
「おま、なんなんだよそれっ、う、ンだからやめ、それ、ちょい」
「黙れ」
低く強い声と同時、奥まで指が突き込まれ「うあっ」思わず声を上げた。
「……済まない、少し黙ってくれ」
「無理っ!」
「無理でも、頼む、藤枝」
一旦引き抜かれた指がまたグチュッと突き込まれる。さっきよりキツい。
「な、なっ、なにっ!?」
指がそこを出入りするたびに、グチュグチュ音がして、でもそんだけじゃなくて
「あっ、そん、すんな、やめろ」
中で指が暴れてて! あ~もう、なんか変な感じ、つかちょい気持ち悪いつか、つかなんだよ、突っ込むんならっ
「さっさとやれば良いだろっ!」
「藤枝、静かに……頼む」
低いけど、どこか必死に聞こえる低い声が耳のすぐそばで聞こえ、大きな手がなだめるように背を髪を撫でる。
「こうしないと、怪我をする」
「け、怪我って、うあっ」
指が中で暴れてる。そんな感じ。「なんかヤだって、やめろって」必死に声上げても指は動き続け、「大丈夫だ」「学んだんだ」必死な感じの低い声が、何度も何度も耳元に聞こえ、唇は時々耳に触れてゾクッとして「ひゃ、やめ」なんて声上げたら、「頼む」なんて耳に吹き込まれて、またゾクッとしちまって、ギュッと目を閉じる。
「藤枝を傷付けたくない」
もうすっかり背中にのしかかってる丹生田は、耳にくちつけたまましゃべってて、「だからおとなしくしててくれ」とか、「大丈夫か」「もう少しだ」なんてずっと言ってて、そのたんびにゾクゾクして「うひゃっ」とか「ややや」とか騒いじまって。
丹生田はハアハア息を荒げてずっと指で奥を探ってて、急にビリッとなんか違う感じが来て
「あぁぅ?」
ひっくり返ったヘンな声出る。
「はっ、な、……ッ、なに」
パニクってたら、低い声が聞こえた。
「……ここか?」
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