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99.好きにしやがれ※

「……ここか?」  低い声には、妙な達成感滲んでる。  なんだよ今の!? どうなってんだよ? てか、なんだって…… 「あ、あぅ」  身体がビクビクッとしちまう。  なに? コレなに? 「や、やめっ」  必死に声上げる。  けど「ここなんだな」とか、低い声が、さっきまで焦ってたくせに、  なんでんな、妙に嬉しそうな…… 「あ、あっ、」  てか指が動く、動く動いてる動いてる、中で 「ちょま、ああぅ」  つかコレ、ヤバい、ヤバい感じで気持ちイイ、いやいやいや! 「やめっ、つって、ハァッ、んだろ、てっ、ぁ」  ビクビクしちまいながら、必死に抗議してんのに、丹生田の野郎ゼンッゼン聞きやしねえっ! 「あぁぁっ、や、めっ、ンのやろ……っ!」 「……藤枝……」  低い丹生田の声が耳元に、息もかかって、そっちでもビクッとかしちまう。  ちょ、ヤバいってヤバいってマズイって! 焦りまくって、んのに、デカい手に包まれる、なにがってちんこが!  そんで擦る、擦る、て、ヤベえって! 「あっ、バカっ! ばっ……!」  やべやべ、やべえってダメだって!  さっきからヤバイの来てんのに、ちんこも……っ! 「やめ……にゅうっ、ンのや……っ!」  ただでさえ早いんだから俺っ! 「っ……!」  息が詰まり  身体がビクビクッと 「~~~~~っ」  一瞬か、そうじゃねえか、わっかんね  気づいたら息ハァハァで、汗びっしょりなって、ぐったり枕に顔押し付けてた。 「……出たか」  左耳に聞こえた低い声が、なんか嬉しそう。  イラッとする。  出たよ、ああ出ましたよ、くそっ、どうせ早いよ俺はっ! なんだよ、なんだっつんだよ! 「……悪かったな……!」 「悪くはない」  肩越しに後ろへ横目送る。目を細めてて、丹生田はマジ嬉しそう。 「…………」  さらにチカラ抜けた。 「嬉しいか。俺が早くてチョロいって」 「気持ち良かったのだろう」  言いながら、丹生田は奥の指をまた動かした。 「うぁ」  ビクッとしちまう。 「……めろっての」  てかなんなの? なんなの俺? そんでなんなのおまえ? 「……済まん」  なんでちょい笑ってんだよ? チカラ抜けるだけだっつの。  そのまま指が抜け、はぁぁぁぁ、なんて息出て身体全体からチカラ抜けた。もうグッタリ。 「あ~……もう……」  なんかめっちゃ疲れた。 「……好きに、しやがれ……」  半分ヤケで言ったら、 「ああ、そうする」  耳元で囁くような、妙に嬉しそうな低い声。  なんでンな声なんだよ。コッチはグッタリだっつの。なんなんだよ、なんなんだっつの。 「くそ……」  笑うような息が肩と頬にかかる。けどもう一杯一杯、なんも言えねえ。てかなに言えっての?  背中に密着してた丹生田の体温が離れてく。  はあ、はあ、はあ  荒くなってる息を整える方に意識向ける。  だってまともにしゃべれねえし、すぅぅ、はぁぁ、とか、深呼吸して。  なんとか息が落ち着いてきて、ちょい冷静になったアタマが自動的に今の状況を検証し始め、つか、つか、ケツの穴弄られてちんこ擦られて簡単出ちまうとか! 「……う~…」  喉の奥から呻くような声が漏れてた。顔カッカしてくる。  ぜってー真っ赤になってる。ヤバい隠さなきゃ。枕に顔押し付けたけど、全身からどっと汗が出てくるのは隠せねえよな? だって背中から離れてっけど、足が触れてっし、まっぱでこんな近くにいるわけだし……ぜってーバレバレじゃん?  焦りまくってジタバタしそうになるの、全力で押さえる。ここでさらに引かれたら立ち直れねえし、耐えろ俺!  つかコレかなり情けねえつか……うわもう、どうしたら! 超ハズい! コレもうぜってー丹生田の顔見れねえやつじゃん! (……あ、…てか………)  けどふっと浮かんだ考えにチカラ抜け、息も止まった。  ────そうだよ。  別にイイんじゃん。どうせもう、顔見れねえんじゃん。なに焦ってんだよ俺。だって、だって─────  ……どっちにしろ丹生田とはもう……友達じゃいらんねえ、んだし。それでイイって、俺が頼んだんじゃん。ンだから今、こんなコトしてんじゃん。  それに、それに丹生田、離れたじゃん? もうヤになったんじゃね? だよな、なっさけねえ野郎の裸なんて、触りたくもねえよな? そうだよ、決まってんじゃん。つまり───── (もうコレで終わりだ)  考えが進み、ガックリする。  今まで好きだってこと隠してたの、なんのためだ? 決まってる。丹生田のそばに居続けたかったからだ。  なのに自分でぶちこわした。勢いで、誤魔化せなくて……アホだ俺。  じわっと涙まで滲んでくる。なっさけねえけどしょうがねえじゃん?  もういいよ、付き合ってくれてあんがとな。もうイイから出てくでもなんでも好きにしやがれ。  ……ああくそ、俺ってマジで大バカ……  ─────ハッと目を開いた。力強い手が腰を……つかんでる。 「……え?」  触った? だってヤになったんじゃ────  手が腰をぐいっと持ち上げた。上半身がずりっと引きずられて、枕から離れた顔がシーツを擦る。  腰だけ上げてるカッコになってる? なに? なにすんの? 「な、なに」  思わず言ったけど丹生田はなんも言わない。鼻息とか荒くて、ふうー、とか息吐いてンの聞こえるだけ。つか! その息が! ケツにかかってんですけど!  え、え、てか! つまり丹生田ってば、ガッツリ上がったケツ、ガン見してるとか、そゆことっ!?  カァッと全身から汗が出る。  うわなにハズい! 超ハズいし!  焦って動こうとしたのに、片手が腰の前に回ってペニスを握った。最高潮に焦る。 「まっ……! タンマッ!!」 「…………」  声は返らず、荒い息の丹生田の手はゆっくり上下運動。 「タ、タンマって」  聞いてんの? 聞いてんのかよ? なんでその手止まんねえの? 「お、おいぃぃ」  情けない声出ちまう。だって擦られて、丹生田の手に、そんだけで俺……簡単に勃っちまってる。  ケツにかかってた息が離れ、無言のまま丹生田の膝が動いて足開かされて、そのまんま足の間に居座ってる丹生田の体温が近づく。前に回った手は俺の擦り続けてる。 「おま、タンマつってんだろ」  次に出た声は泣きそうに震えてた。またじわっと涙湧いてくる。  これヤバいって、勃ってるちんこ握られてっし動けねえし。  なんなの俺? なんですぐ勃つ? 決まってる、丹生田だからだ。丹生田の手だからだ。 「なんなんだって」  前握ってた手は離れた。けど丹生田の声は返らない。  わけ分かんねえ、めっちゃ泣きそう。つか泣いてんのか俺。なっさけねえ……んん?  なんか当たってる。どこにってケツに。 「え」  さっきまで指グリグリしてたとこ。ヌルッとしたモンが。 「……なに……?」  ふうー、とか息吐いて「……いくぞ」丹生田が低く言った。 「いく? え?」  ……ああ、そっか。ヤんのか。  そうだよな、バリバリ勃ってんだから、丹生田だって出さねえと。てかコレってアレだ、ドッグスタイル。……AVかよ。  ククッと笑いが漏れる。  そっか、後ろから突っ込むんなら、顔見えねえなら、女じゃなくても胸無くても。……うん、そゆことか。  ククク、とか、漏れる笑いを止めようなんて気も失せる。ぐったり。身体のどこにもチカラ入んない。  またじわっと来る。シーツに顔押し付けたまんま、笑い漏らしつつギュッと目を閉じる。逃げる気力も無い腰を、デカい両手がしっかりつかんでる。  もう分かった、もう、いいよもう、俺疲れた。  てか俺がヤれって言ったんだろ、これでイイんじゃん。なに焦ってんだよバカか俺。  すぐに、ぐ、ぐ、ぐ、と、少しずつ押し広げられていく。  うあ、なにコレ、なにげに圧迫感すげえし。だよな、あのでっけえの突っ込んでんだもんな。  笑いは失せ、目を閉じたままじっと耐えようと……つか、あああ 「……っ、ちょい」  ちょいちょい、待て、待てって……いや、言うな、言っちゃダメだ。必死に歯を食いしばる。  手が勝手にそこら辺ギュッと握りしめる。シーツかな、毛布かな、分かんね、けど。  丹生田の、あのデカいのが、めりめり言いそうな勢いで入ってくる。ちょ、無理、無理だって! 痛えよ、痛えだろバカ 「……てぇ」  思わず声が出た。けど入り込んでく動きは止まんねえ。 「……く」  唸るような低い声が降ってくる。  イイんだ、これで良いんだからダメだ、もう声とか漏らしちまわないようにしろ俺。 「は、ぅあ」  なのに喉から勝手に呻きが漏れる。だから唇に歯を立てた。唇切れそうってくらい、キツくキツく噛む。 「……済まん、…っ!」  腰をつかむ手に、痛いくらいチカラ入って、丹生田の動きが止まった。  はあ、はあ、はあ、と荒い息。腰抑えてた手からチカラ抜ける。 「済まない……」  なに途中で謝ってんだよバカ。さっき色々言ったじゃんよ? そんとき謝れよ、くそバカ。 「済まん、済まない、藤枝」  荒い息の合間に背中に落ちる声は、なんか必死だった。

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