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122.月が、きれいだ※
はやっ! つか何回見てもキレイだな~。
露わになった鍛えた上半身に見とれてたら、はいてたスウェットも脱いだ。天蓋ベッドの天井とかカーテンとか、めっちゃ花柄に囲まれてンのが、ちょい違和感っちゃ違和感なんだけど、なんて見てると、パーカーつかんで脱がそうとする。
「や、あの」
うろたえ気味の声が出たら、手が止まった。
「つか自分で脱ぐし」
くっきりと一文字だった眉が少し歪み、眉尻が下がる。
「……ダメか」
少し悲しそうな顔になってて、ちょい慌てて「じゃなくてっ」言葉を継いだ。
「面倒だろ脱がせるとかっ!」
けど丹生田はきっぱりと首を振った。
「そんなことはない」
なんかすんごい目力で見つめられてる。
「え……そ、そうか?」
「ああ」
くっきりと頷いて、丹生田の手がまた動き始める。もうなんか言うのも無理で、パーカー脱がされて、ジーンズ下ろそうとして「腰を上げろ」とか言われて、素直に腰上げたらスルッと脱がされて、パンツも一緒だったから、まっぱになったわけで、ちょい焦って身を縮めたのはもう、本能的な感じで。
だって丹生田に比べたらへちょいし俺!
すると肩を押さえたでっかい手に阻まれる。せめて身体を隠したくて腕を身体の前で組んだ。
「隠すな」
「だって!」
パニクったまま声裏返る。
「へちょいしハズいしっ」
「なにがだ」
とか、不思議そうに聞くから、ちょいキレる。
「見んなよ! ひっ、貧弱なんだからっ」
あきらか逆ギレだけど、丹生田は眉寄せて、きっぱり「藤枝はきれいだろう」と呟いた。
「なに言って……! つかおまえとか、あ~、姉崎とかと違って…」
「きれいだぞ」
うわーマジ顔だし! つか、つかつか、ええ? 丹生田ってこういうコト言う奴だっけ?
焦りまくってたら腕は強引にどかされた。そんで手がっ! うわ、わわわ
手が、腹から胸に、撫で上げていく。怖いみたいに指はそっと動いて、すんげえマジな目で、大切なものに触るみたいに優しく、優しく──────てか!
うわ、うわ、これヤバい。めっちゃヤバい。なにがって俺が! ときどきビクビクしちまうし、ドキバクぱねえし!
そんで胸まで昇った手がさわさわしてる、って! なに? え、乳首? なにンなトコ弄ってんだ? つか丹生田、超マジな目でどこ見てんだよ! てか、なんか、なんか変だし
「ちょ、なに」
とか漏れた声は、ハッと顔上げた丹生田がむしゃぶりつくように唇を塞いだため、続きは鼻から抜けるような呻きになった。丹生田の荒々しい鼻息が頬にかかる、けどこっちも、めちゃ息上がってる。
なのに唇を塞がれたままで、鼻だけの呼吸じゃ足んなくて、ぼうっとしてきた。胸への刺激はその間もずっと続いていて、なんだかむず痒いような、わけ分かんない感覚にちょい焦って、肩を押したら唇が離れた。
「……は、おま、ヘンなとこ、さわ……つか見るなっ」
だって見てんだ、じいっと胸のあたりをっ!
「月が……藤枝……」
呟いた丹生田は、次の瞬間、胸に吸い付いてチュウチュウしだした!
「ばっ……! なに…っ」
騒ぐとすぐに顔を上げたが、ちょい涙目になっちまう。
「ばかやろ、なにやってんだよ」
声も情けなく震えて、睨むように見上げたら、なぜか丹生田は歯を食いしばり、ぐぅぅ、と唸るような音を漏らした。
(え、なに、吐きそうとか………)
もっと泣きそうになった瞬間、背に回った片腕に持ち上げられ、バサッと音がして天地が反転した。
「えっ」
天蓋ベッドの天井の下、ロココな花柄が宙を舞って、それを背景にした丹生田が、眉寄せた怖いくらい真剣な顔で、息を止めてた。
「にゅう……」
思わず手を上げ、こわばってる頬に触れる。同時に舞い上がってた布団が丹生田の肩に落ちた。
頬の緊張が緩み、眉は寄ったまんまだけど唇が少し開いて、ふうぅぅぅ、と細く息を吐き出した。
なんだよ、まるで試合前みてーじゃん、とか思って笑っちまう。
「ばか、ンなテンパんな」
「藤枝っ」
噛みつくみたいにキスされて、両腕でガッチリ固められた。いや違うか。コレ抱きしめてるとかそういう……てか!
「いっ」
ちょ、痛い痛い痛いっ! 力強すぎっ!
夢中で背中タップしたら腕が緩んで、ホッとしつつ、ハアハアと酸素を補給した。また丹生田が怒ったようなマジ顔で見下ろしてる。
「ふじ……月が」
ああまた。
クッと笑っちまいながら、さっきタップしたまんま背中に乗っけた手でさわさわする。おお~、やっぱ筋肉の張りすげえ。ガキの頃乗っかって遊んだじいさんの背中みてえ。
「月がどした?」
とか言った次の瞬間、片脚が持ち上げられて、丹生田の太い腕に引っかかった状態になり
「月が……きれいだ」
苦しそうなくらい、絞り出すみてーな声と共に、ケツにぬるっとしたものが入り込んだ。
「うあっ」
思わず出た声は裏返ってた。
指だ、丹生田の指だ、って分かってんだけどっ!
が! 問題はこの体勢つか!
コレ大また開きじゃんっ! 色々モロじゃんっ! ヤバイじゃんハズいじゃんっ!
んでも丹生田の腕が膝裏にしっかりはまってて足首くらいしか動かせねえ! のに中で指が動いて、また声出そうなったけど、ギュッと目を閉じ、歯食いしばって堪える。
いやいやいやパニクんな俺っ! 落ち着け、落ち着け、落ち着けっ!
二回目だから分かってンだろっ! アレだ、怪我しないようにってやつだ、そうだよだからきっとこんなカッコに、前はホラ後ろからだったし………はっ! そうだガン見されたんだケツをっ!
カァァッと顔に血が上る。
「……大丈夫だ」
低い声が降って、丹生田の声だ、と思った。ゆっくり目を開いたら、めちゃ真剣な目が見下ろしてる。
「ゆっくりやる」
言い聞かせるみたいな低い声の通り、指は入り口あたりでウニウニしてて、強引に進もうとしない。
「痛くはしない」
目を見上げて、なんかパニクって体中にチカラ籠もってたンが抜ける。
────────そうだよ。
これ丹生田じゃん。だいじょぶに決まってんじゃん。なに焦ってんだ、つかエッチできんならなんだって良いんじゃん。そうだろ俺。
「うん。分かってる」
だからなんとか笑顔で言った。
ぱちくりして一瞬後、黙ったまま頷いた丹生田の額に、ちょい汗が滲んでる。
(そうだ、こいつだってテンパってたんだ。なら俺が落ち着かなきゃじゃん)
すうう、はああ、と深呼吸してたら、指は壁を探るみたいに少しだけ進んだ。すぐに止まってうにうにして、またしばらくしてから少し進む。
違和感はやっぱある。けど堪える。だってちょっとでも呻いたり眉寄せたりすると、指の動きは止まるんだ。そんで丹生田はキスしたり髪撫でたりしながら「大丈夫か」って聞く。
「だいじょぶ、だって」
言うと歯食いしばったみたいな顔で頷いて、そっと指を動かす。違和感はあるけど、ゆっくりだし、気遣ってくれるの分かったから、そこまで気にならなくなってきた。
つうかこっちも丹生田さわさわしてるわけで。最初は肩とか腕とか背中だったんだけど、この際だから胸とか腹とかも触りまくっとく。だって前は後ろからでこっちから触るとか無理だったし、んでやっぱサイコーなわけで。
無自覚ににへらとか笑ってたら、ビクゥンッと身体が跳ね、「んぁっ」声が漏る。
─────来た! あれだ、あれっ! ヤバイやつっ!
「ここだな」
丹生田の低い声がなんか満足げで、ふざけんなっ! とか思ったけど
「ふっ、あ」
抗議の声はヘンにかすれて、身体は強い刺激に跳ねるし、なによりヤバいんだ、なにがって俺が! なんかグングン来るんだって!
「あ、くぁ……ふっ」
今にも出ちまいそうに、つか、つかつか、やめろっ、やめてくれ丹生田っ!
「や、めっ、……だっ」
けどまともに言うこともできねえ……つか、つか、気持ちイイっちゃイイんだよ、めっちゃイイんだけど、けどけどこんなん、知らねえ、こんなん知らねえ!
「にゅ……や、や……めぇ…っ」
混乱しながら見上げる、丹生田のくちもとが緩んで─────このっ! 笑ってん「じゃ……ねっ」なんとか言ったけど目を開け続けていられねえっ!
だってなんか、なんかなんか、満杯まで上がってたなんか、表面張力で堪えてたなんかが、一気に溢れてく。
「あ、ぅあ……っ……っっ」
身体が自然に跳ねる。足の指先までチカラ籠もる。喉がなにかの音を出してる。目の奥がスパークした感じで、一瞬アタマ真っ白になって、わけ分かんね……っ!
「く、……ぅあっ、あっ……」
一瞬の緊張。
そんで脱力。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
めっちゃ息が上がって、なんも言えねえ。
……え。
デカい手がアタマ撫でる。指が髪を後ろに流す。
「気持ちよかったか」
声に目を開く。けどなんか滲んでよく見えなくて
でもイヤでも見えるくらい近くに丹生田の顔があって、そんで嬉しそうで、そんでホッとして……なんか涙出てきて
「にゅうだぁ~」
なっさけねえ涙声になってたけど、でもめっちゃ大好きだって、そう言おうとした。だってマジでなんなのってくらい気持ちよかったし。なのに
「どうした、痛かったか」
声は低く揺るぎない。いつも通り。
でもめちゃ慌ててるって分かる。俺だから分かる。焦って撫でたりさすったり、「すまん」とか、もう、もうもう、的外れすぎて、笑っちまう。
「だいじょぶ」
「本当か」
まだ心配そうに顔覗き込んで、髪撫でたりして。またクックッと笑っちまう。
コラ、俺だって二十歳なったんだぞ。痛いくらいで
「……泣くか………ばか」
また、丹生田の顎がふくれた。
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