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単調な日々はもういらない。
……他人とキスしたのなんて、いつぶりだろう。
やんわりと触れ合って、角度を変えて、もう一度。
次は、深い口付け。
「っん、むぅ……ッふ、」
ぬるりとした体温が俺のなかに入ってきて、心拍数が上がる。
身体中の血液がカアッと熱くなって、心臓がドクドクと鼓動を伝えてくる。
口内を、粘膜に絡みつく彼の熱い舌に、俺は。
「ふ、ぅ……んぁ、」
は、あ……。
喘ぐ寸前みたいな、甘い吐息が漏れる。
歯列をなぞられ、上顎を擽られると、大袈裟なくらいに肩がびくりと跳ねた。
上唇をちゅっと吸われて、可愛らしいリップ音がしたあと、離れていく。
人の良さそうな顔で真摯に見つめられると、今のキスが求愛のように思えて顔が火照った。
火照った、のだ。
気持ち悪いだなんて、嘘でも吐けないほど、口付けに陶酔してしまった。
「どう、ですか……?」
「……」
「やっぱり、嫌でしたか?」
「……おれが、」
「……?」
「……おれが、ほんとに嫌だっていったら、やめてくれる?」
「えぇ、それはもちろん。俺に特殊な性癖はないですし」
はっきりしたイエスもノーも答えてないが、彼は立ち上がり、俺ににっこりと笑いかける。
「行きましょうか」
言いながら、指の長い綺麗な手を差しのべられて。
今度はその手を、掴む。
拒めなかった。
いや、拒まなかった。
俺は、いつもと違うスリル欲しさに、彼を、非日常を選んだのだ。
単調な日々はもう、いらない。
fin.
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