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第6話

「待ってましたケーキィ!」 「早く食べたいですね!」 四宮と立花くんが嬉しそうに俺が持つケーキの箱を見ていて、三島さんもさりげなくテーブルの前に座る。 「…ん?矢吹、どうかした?」 「あ?…別に、なんでもねえよ」 「……ふーん?」 「なんだよ」 「いや?なんか嬉しい事でもあったのかな〜って」 「るせぇ」 朝丘さんと矢吹がそんな会話をしているなんて知る由もなく、俺はさっそく箱を開け、ケーキを取り出した。そしてケーキを見て、思わず手を止める。 「え…」 普通、クリスマスケーキと言ったらショートケーキやチョコケーキ。みんなでやるクリスマスパーティーだったら尚更そうだと思っていた。 でも、このケーキは違った。 「ん?どうした?藤沢」 「え、や…、え…?」 不思議そうな顔をする四宮に、俺も不思議そうな顔を向ける。立花くんも頭にハテナマークを浮かべていて、三島さんは欠伸をしていた。 「どうしたの、チビちゃん。そのケーキ、好きじゃなかった?」 「えっ、ちが…!だって、これ…!」 背後からそう言われ、急いで否定しようと振り向くと、何やら俺の反応を面白がる朝丘さんがいた。 「ふふ、"だってこれ、俺が一番好きなケーキ"?」 「…っ!」 そう、取り出したケーキは、プリンケーキ。 俺が一番好きなケーキ…。 「なんで…?」 「ん〜?クリスマスだし?サンタが持ってきてくれたのかも?」 プリンケーキが好きなんて矢吹にも言ったことがなくて、だから余計に驚いて、朝丘さんの言うサンタを信じそうになった。 「いいの…?クリスマスケーキが、プリンケーキで…」 俺は好きだから嬉しいけど、みんなが好きとは限らないから、少し罪悪感が生まれる。申し訳なさそうに四宮を見ると、ニコッと笑って俺の頭をくしゃくしゃに撫でた。 「うまそうじゃん!?早く食おうぜ!!」 「矢吹、早く切れよ」 「美味しそうですね!僕もプリンケーキ好きです!」 「でも一番好きなのは俺だよねー?立花くん♡」 みんなが口々にそう言って、俺も自然に笑顔になる。思いもよらないプレゼントに嬉しさが溢れていって、胸がいっぱいになった。 「よかったな」 「うん!!」 この日食べたプリンケーキは今までで一番美味しくて、この日行われたクリスマスパーティーは、一番楽しかった。 「じゃあ、そろそろ俺ら帰るわ!」 「お邪魔しました。良いお年を!」 「さみぃ…おい四宮、風除けになれ」 「手、繋いでくれたらね♡藤沢もまたなー!」 ケーキを食べ終え、しばらくみんなでまったりとした時間を過ごした後、矢吹と玄関までお見送りする。 「みんなバイバーイ!!」 こうして、楽しかったクリスマスパーティーは幕を閉じた。

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