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プロローグ

「太宰さん」 呼ばれた方に向いてみると、にこりと普段見ることが出来ない穏やかな笑みを浮かべた芥川がいる。 辺りは何一つない、真っ白だ。 「僕は、貴方に出会えて幸せでした」 そう言うと一つの涙が芥川の頬を伝う。 何時だって自分を一番に求めてくれたのは芥川君だった。 自分に認められたいがために無理をし、独走して周りに迷惑をかけてばかりで、自分の出来損ないの元部下で、でも実は一番に愛情を注いできた子だった。 それなのに 君も自分の元を離れていってしまうのか? 「芥川君……?」 呟いて手を伸ばしてみる。芥川の目にはいつもにない光があった。 冷や汗が首に垂れる。 芥川に手を伸ばしても何故か届かない。体を掴もうとしても透けて、通り抜けてしまう。 待って、待ってくれ。 何度想っては思い切れぬ気持ちは体を突き抜け、"苦しい 苦しい"ともがきだす。 そうして芥川の姿は太宰の目から見えなくなると、膝から崩れ落ち、拳を地面に叩きつける。 何故、何故皆私の前から消えていってしまうのだ。 体が震え出す。耳を塞ぎながらその場に蹲った。 やめてくれ。どうか、どうか私を。 「私を……独りにしないでくれ」

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