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第1話
ハッとして体を起こすと、そこが自分の部屋だというのを知る。
体は嫌な汗をかいていて、包帯が少し湿っていた。
「大丈夫……ですか」
俯いていた顔を上げると、寝巻きを着て心配そうな表情を浮かべた芥川がいた。
そうか、そういえば今日は……
寝惚けていた脳を無理矢理起こし、何故彼がここに居るのかを理解する。
芥川の手首を掴み引くと、震えた手で抱きしめる。芥川は慌てた様子で離れようとしたが、後頭部を抑え込み、離そうとはしなかった。
「……すまない、今だけこうさせてくれないか」
耳元で囁くと、体がビクッと揺れる。すると、芥川は何を思ったかじたばたしていたのを止めると、太宰の頭を撫でながら呟くように言う。
「……はい。太宰さんの気の済むまで」
しばらく抱き合い、薄らと目を開けて時計を見ると、針は「11:30」を指していた。
自分は長い間芥川の体温を欲していた事に気付くと、深い溜息を吐く。
「買い物に行こうか」
もう昼だよ、と付け足し自分にもたれかかった芥川の体を起こすと立ち上がる。
湿る包帯を取り替えるといつもの服装に着替えた。
ループタイをつける際、芥川君が苦戦しながら私のために頑張っている所を見て悶えていたのは言うまでもないだろう。
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