3 / 13
第2話
人通りが多い道を練り歩く。
砂色の外套を着た男、太宰治は芥川の手にあった袋を軽々持つと、もう片方の手を芥川の空いた手に合わせ、指を絡めた。
「だ、太宰さん……あの」
「どうかしたのかい?」
気まずそうに顔を歪め、声を小さくあげる。
もしや、手を繋ぐのが嫌だったのか。
顔色を伺ってみるも、その様子は無いように見えた。
「その……魘されていたので……」
どうかしたのですか、と途切れ途切れに言うとまた、怯えたように俯いてしまった。
殴られると思ったのだろうか。
もうそんなことする気もないのに。
「嗚呼……大丈夫だよ、少うし悪夢を見てしまってね」
芥川の方へ向くと苦笑し、横断歩道を渡る。
スーパーで色々買ったものの、何を作ろうか。
そんな事を考えながら目の前を通った黒い猫を見た。
猫は鋭い視線をこちらへ向けると、猫撫で声をあげる。
ともだちにシェアしよう!