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最終話

「っ…!遅かったか……」 "いつもの川"へと向かうとそこには大勢の人集りが出来ていた。目を凝らすと、そこには探偵社の全員がいる。 「…!国木田さん!」 敦がこちらへ手を振ると、走り寄ってくる。そして手首を掴み人集りを避けて一人の倒れている男の元へと寄る。 そこには、芥川の外套を抱き、安らかな表情を浮かべた太宰が息絶えていた。 「こりゃ妾にも治せないよ」 暗い表情をしながら探偵社の皆、太宰を見つめる。 谷崎に至っては泣き叫ぶナオミを抱き、「大丈夫だよ」と言うばかりだった。 「……自殺が成功したのか。良かったな」 自分でも思っていない言葉が出てくる。 お前がいなくなってせいせいするよ。 そんな事を言い並べているうちに目からは大粒の涙が零れてくる。 「国木田さん……」 敦は自分を見たまま言葉を失っていた。 自分は此奴の先輩なのに、こんな惨めな姿を見られて恥ずかしくないのか。 それはお前もだぞ、太宰。 死に顔を見られるだなんて案外お前も無防備なんだな。 太宰が入ってから理想の崩される日々だった。 色々な人の所へ行って謝り、怒り狂っては何本もの万年筆を折った。 でもそんな記憶より……楽しい記憶の方が大きくある。 "国木田くーん、ほらみてあの美女!私心中のお誘いをしてくるね" "ああ。……ん?あ、おい待て太宰!" 此奴は本当どうしようもない奴だった。 だけど、誰一人欠けてはならないこの武装探偵社にとって此奴は必要不可欠な人材だ。 太宰、お前書類溜めているだろう。 太宰、天国へ行っても女性に心中を乞うんじゃあないぞ? 「国木田さん、行きましょう」 敦は顔を歪めながら手を引くと、社員寮へ帰ろうとする。探偵社の皆も太宰の死体が運ばれていくのを見届けると、こちらへ向かってきた。 「国木田さん、僕思ったんです」 空に浮かぶ夕日を見ながら敦は言う。 敦の目には涙が浮かんでいた。 「なんだ」 涙を拭い、鼻声になりながら返事をする。 「今頃二人は幸せなんじゃないかなぁって」 言葉を紡ごうとするが、嗚咽が混じってちゃんと言えそうにもない。 片手で敦の頭を鷲掴むと、ぐしゃぐしゃと頭を撫でる。 「ああ……きっと、そうだろうな」 目を閉じて溜息をつく。 "太宰さん、やっと会えましたね" "ああ、これからはずっとそばにいよう" 目の奥ではいつものように微笑む太宰と、幸せそうな芥川表情を浮かべた芥川が手を繋ぎながら寄り添い合っていた。

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