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第11話

川の中で目を開ける。少なくともこの川は綺麗とは言えない。だが私はある物を探した。 芥川君が川辺に上げられた時に無かったもの。 それは…… 「矢張り、ここにいたんだね。芥川君」 "ええ、ずっと貴方を待っていました" 太宰は"ある物"を抱きしめると、目を閉じた。 「すまないね、寂しかっただろう?」 "はい。こちら側へ来たら甘えさせて欲しいです" 「そんなことを言うなんて、君も成長したじゃあないか」 "……意地悪しないでください" 「ふふっ、悪いね」 何も無い私の中の世界で、芥川君が笑う。 また、幸せな時間を、私と送ろう。 今まで一人にして悪かった。 でも、これからは離れないから。 ぎゅっと抱きしめると、芥川も同じ強さで抱きしめる。 そこで、太宰の意識は途切れた。

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