1 / 9
第1話
**七琉
「会長。頼まれていた書類持ってきました……ってあれ」
放課後、生徒会長の天野 潤 先輩に頼まれていた書類を持っていくと、生徒会室はもぬけの殻だった。
あるのは、窓を背に置かれている社長机のように大きな会長用の机に置かれた、くしゃくしゃのカーディガンのみ。
「はぁ……」
おれはため息をついて、机に書類を置いてからカーディガンをたたむことにした。
「全く…。王子会長なんて呼ばれているくせに、自分のことになると適当なんだよな、あの人」
呆れながらカーディガンをたたんでいると、ふわりと天野先輩の匂いがした。
思わずドキリと心臓が鳴る。
ちょっと甘くて爽やかな天野先輩の匂い。
意識した途端、頭がクラクラしてくる。
ふと視線をずらすと、机の端に貼られた付箋に気がついた。
そこには、“16時から飯山先生と会議”と書かれていた。
そこでそういえば、と思い出す。
天野先輩、放課後、生徒会旅行の案を生徒会担当の飯山先生に提出しなきゃ、とか言ってたっけ……。
ちらりと時計を見た。16時13分。
あの先生は無駄話が長い。
ぴったり16時に行ったとしても、あと30分は帰ってこないだろう。
思わずゴクリと生唾を飲み込む。
いけない考えが頭に浮かんだ。
ともだちにシェアしよう!