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第1話プロローグ
この国には『情けは人の為ならず』という諺がある
人に親切なことをすればその相手は助かるし、いつかその行いが自分の為にもなる……というような意味だったと思うと折原柊吾は考えていた
ちなみに柊吾は小学五年生まで情けをかけて助けてもその人のためにならないと誤った覚え方をしていたけどよくある勘違いなので恥ずかしくは思っていない
なぜ柊吾がそんなことを考えてるのかというと…柊吾は今一つ目のバイトを終えて次のバイト先に向かってるところだが目の前に見るからに困っている男性がいるからだ
歳は四十代前半ほど…柊吾の父親と同じくらいだがワックスで整えられた髪にパリッとした上品なスーツ、チラリと見える腕時計は柊吾の目からはどんな価値があるのかわからないが安物じゃないのはわかるし革の靴は先まで磨かれていて今頃家でぐうたらしてる自分の父親とは全く格が違う
その男性はスマホを見て…辺りを見渡して…首をかしげる動作を繰り返している
(道に迷ってるのか…?この辺交番ないし…まぁ、次のバイトまでけっこう間あったから声かけてみるか…)
ということで柊吾は親切心でその男性に声をかけてみた
この親切が後に柊吾の平凡な人生を変えるキッカケになるとは思いも知らず……
男性は予想通り目的のケーキ屋が見つからずに困っていたらしく、柊吾が店名を聞いたところ以前に部活の先輩の誕生日ケーキを買いに行ったところだった
ここから徒歩で五分ほどだったしその店は分かりにくい場所にあるので説明するより一緒に行ったほうが早いと案内役を買って出た
「いやー本当に助かったよ折原くん!もう諦めて帰ろうかと思ってたんだ」
「いえいえ、ここ分かりにくいですよね、看板小さいし、ここらではかなり美味いって有名なんですけどこじんまりとした店だし…水無瀬さん、甘いもの好きなんですか?」
店を出た柊吾はホクホクと上機嫌に笑ってる男性…水無瀬を見てつられて微笑んだ
水無瀬は店で八千円分のケーキや焼き菓子を買っていて、仕事ができそうな男が可愛らしいケーキ屋の箱を持ってるのはアンバランスでちょっと可愛い。
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