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ギャップ
「俺ぇ、なんれこんならめらめなんらぁぁ……っ」
「っせぇな……」
───で、今現在。
とある大衆酒場にて、俺は現在進行で迷惑を被られていた。
年季が入った、けれどそれがまた味を出している木彫のカウンターに座っている俺の隣で、やつはすでに泥酔と言っていいほど酔っ払っている。
当たり前だ。
生ビールに始まり、焼酎、日本酒、洋酒、韓国酒、果実酒、酎ハイ、甘ったるいカクテル。
ある程度時間が経ち、ほどよく酔っ払ってきたころに、あいつはいきなり店にある酒の種類を全制覇するんだと意気込みだし、マジで実行しやがった。
調子に乗ったそのツケが、これ。
もちろん俺は何度も止めたが、こいつが“聞く耳”というものを持っていたら、毎回こんなことにはなっていない。
「おれっ、おれは、ほんとにらめな男なんらよぉ……っ」
「はぁ……」
ついつい深い溜め息が漏れた。
酔ったこいつは、普段からは想像がつかないほど甘ったれた男になる。
面倒なことに笑い上戸からの泣き上戸へとシフトし、おまけに口もいつもより回るから、始めはよくても後半がめんどくさい。
……呂律は全く回ってないが。
さっきまで満面の笑みで何やら楽しげに話していたのだが、いつの間にかシリアスモードに突入したらしく、気づけば俺の横でカウンターに突っ伏し、ズビズビと鼻を啜って泣いていた。
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